研究課題
重症心不全の治療法として細胞移植による再生治療が期待されている。我々はこれまでにiPS細胞由来心筋シート治療法を開発し、虚血性心筋症モデル動物を用いて有効性と安全性を確立したうえで、2018年に臨床研究の開始が承認されている。しかし現在の技術では、心筋シートの厚みは0.1mm程度であるため、約1cmのヒト心臓壁に細胞補充するには、更なる厚みを持ち、酸素・栄養供給に優れ、筋繊維の配向性を持ち、操作性が高い組織の形成が望まれる。本研究では、より高い心機能改善効果が期待できる“3D Mini Heart”を生体外で創成し移植に用いることを目的とする。我々はこれまでに、FDA認証済の生体分解性高分子材料(PLGAポリマー)で作製 したナノファイバーを用いて、3次元配向性の心筋組織片の開発に成功した。このナノファイバーは操作性に優れ、適度な間隙を作り多層化しやすい性質を持つ。そこで、生体心臓内の微小環境を再現する多層化した 重厚な“ 3D Mini Heart”の構築を目指し、多層化で課題となる栄養・酸素供給を確保するため、我々は回転培養装置を利用した。心筋組織の中に微小血管構造と線維化細胞構造を導入した上、最終的1mm以上の重厚な複合体心筋組織を構築した。組織を解析した結果、各細胞種の特異的のマーカーが強く発現され、細胞間繋がりがよい、細胞外基質の分泌量が多い、生存率が高いことが確認された。さらに、虚血性心筋梗塞モデル小動物への移植実験を行い、非臨床試験POC取得を行った。移植後の評価を行った結果、心機能が大幅に改善したと共に、移植された重厚な心筋組織の生着能の上昇、線維化範囲の現象、血管新生の改善が見られた。炎症反応は行ってないことが確認できた。以上の結果より、組織工学技術を駆使した高機能化心筋組織による次世代心不全根治法の有効性が判明され、臨床試験への実現が期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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