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2022 年度 実績報告書

上皮内肺がん等の全ゲノムシークエンス解析による新規ドライバー遺伝子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 20H00545
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

河野 隆志  国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80280783)

研究分担者 鈴木 絢子  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00770348)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード肺がん / ゲノム / 遺伝子 / 治療標的
研究実績の概要

上皮内肺がん26例、微小浸潤腺がん18例について、全ゲノム/RNAシークエンスデータを、そのうち37例については長鎖シークエンスデータを取得し、進行がんと比較することで、総合的に早期肺発がん機構のメカニズムの推定を行った。既知のがん遺伝子変異としては、EGFR、KRAS、MET、BRAF、HER2、MAP2K1遺伝子の変異、RET及びALK遺伝子融合は、早期肺がん形成に働くドライバー変化であることが明らかにされた。一方、TP53やSMARCA2/4がん抑制遺伝子の変異は、進行がんに多く存在したことから、発がん後の悪性化に働くことが明らかにされた。また、がんが進行するにつれ、グローバルなDNA低メチル化とそれに伴うコピー数変化、また、BRCA2遺伝子変異などによる変異増加がみられることが明らかになった。
一方、肺がんでみられるものを含めたRET遺伝子の細胞外ドメイン変異について、NIH3T3細胞やBa/F3細胞を用いたTransforming assayを行い、がん化変異であることを見出した。この細胞外ドメイン変異は、Caイオン結合部位の不安定化を介して、分子間SS結合によるRETタンパク質の恒常的な二量体化、ERK分子の活性化をもたらし、その活性化やがん可能はRETキナーゼ阻害薬セルパカチニブ、プラルセチニブの投与により抑えられた。以上のことより、RET遺伝子の点変異は、肺がんなど、複数のがん種の発がんに寄与し、治療標的分子となることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題では、肺がんの早期病変である上皮内がんのオミクス解析を行い、新規ドライバー遺伝子変化の同定、および、ドライバー遺伝子変化を介さない肺がん症例の発がん機構の解明を行うものである。前者についてはRET遺伝子の細胞外ドメインに生じる点変異が新規ドライバー変化かつ既存RET阻害剤に対する治療標的であることを証明し、その成果については特許出願(特願2022-89905)を終え、論文が受理された(Tabata et al., Cancer Res, 2022)。また、後者については、解析が終了し既知のがん遺伝子活性化に加えて、BRCA2変異によるゲノム不安定化、全ゲノムに亘るDNA脱メチル化やそれに伴い大規模なゲノム構造変化により発がんするという発がん経路を同定し、現在、論文投稿中である。よって、計画通り成果が得られている。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、新しいドライバー遺伝子変化を同定するとともに、ドライバー遺伝子変化を介さない症例も含め、肺発がん機構の全貌を明らかにすることである。そのため、点変異のみならず、大規模構造変化やコピー数変化やDNAメチル化等のエピゲノム変化を追及する必要があり、長鎖シークエンス解析を積極的に取り入れ、得られた成果の一部を論文投稿中である。また、RET遺伝子変異については、キナーゼドメインを対象とし、精製たんぱく質を用いたアッセイなども合わせて行うことで、ドライバーがん遺伝子変化としての役割を明らかにする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] Crick Institute(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Crick Institute
  • [国際共同研究] NCI(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      NCI
  • [雑誌論文] Novel Calcium-Binding Ablating Mutations Induce Constitutive RET Activity and Drive Tumorigenesis2022

    • 著者名/発表者名
      Tabata Junya、Nakaoku Takashi、Araki Mitsugu、Yoshino Ryunosuke、Kohsaka Shinji、Otsuka Ayaka、Ikegami Masachika、Ui Ayako、Kanno Shin-ichiro、Miyoshi Keiko、Matsumoto Shigeyuki、Sagae Yukari、Yasui Akira、Sekijima Masakazu、Mano Hiroyuki、Okuno Yasushi、Okamoto Aikou、Kohno Takashi
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 82 ページ: 3751~3762

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-22-0834

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Long-Term Prognosis and Prognostic Indicators of Stage IA Lung Adenocarcinoma2022

    • 著者名/発表者名
      Yotsukura Masaya、Muraoka Yuji、Yoshida Yukihiro、Nakagawa Kazuo、Shiraishi Kouya、Kohno Takashi、Yatabe Yasushi、Watanabe Shun-ichi
    • 雑誌名

      Annals of Surgical Oncology

      巻: 30 ページ: 851~858

    • DOI

      10.1245/s10434-022-12621-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phasing analysis of lung cancer genomes using a long read sequencer2022

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto Yoshitaka、Miyake Shuhei、Oka Miho、Kanai Akinori、Kawai Yosuke、Nagasawa Satoi、Shiraishi Yuichi、Tokunaga Katsushi、Kohno Takashi、Seki Masahide、Suzuki Yutaka、Suzuki Ayako
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 3464

    • DOI

      10.1038/s41467-022-31133-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Whole genome sequencing-based precision cancer medicine in Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Kohno T
    • 学会等名
      第20回日本臨床腫瘍学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 長鎖シークエンス技術を用いた非小細胞肺がんオミクス解析2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木絢子
    • 学会等名
      令和4年度国際がん研究シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ロングリード全ゲノムシークエンスとフェーズ情報解析による肺がんゲノム変異パターンの解明2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木絢子、坂本祥駿、鈴木穣
    • 学会等名
      第81回日本肺癌学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 非喫煙者肺がん・喫煙者肺がんの病因とゲノム解析2022

    • 著者名/発表者名
      河野隆志
    • 学会等名
      第 116 回日本肺癌学会 関西支部学術集会
    • 招待講演
  • [備考] 最適化がん治療の研究

    • URL

      https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/genome_biology/project/020/20190125.html

  • [産業財産権] RETキナーゼ阻害剤によるがん治療の有効性を判定する方法2022

    • 発明者名
      河野隆志、中奥敬史
    • 権利者名
      河野隆志、中奥敬史
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2022-89905

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公開日: 2023-12-25  

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