研究課題
女性の細胞はX染色体を2つ持つ核型であり、XY核型と比較しXX核型では遺伝子発現量を補正する仕組みが構築されている。この2つあるX染色体の片方を遺伝子発現抑制するX染色体不活性化(XCI)という現象は極めて厳密に行われ、その乱れは正常な発生を大きく阻害し胚性致死にまで至る。近年、ヒトでは流産や不育症のみならず、卵巣癌、乳癌や肺癌など女性の悪性腫瘍化にも関連が示唆されている。XX核型細胞特有の遺伝子量補償機構は、1961年にMary LyonによりX染色体不活性化機構の仮説(Lyon MF. Nature 1961)が提示されて以降活発に研究されているが、XCI分子機序では未だ不明な点が多い。その主な理由は、分子機構としてユニークかつ複雑な制御機構が着床前の受精胚から獲得されてくることにある。X染色体不活性化機構の制御を担う遺伝子はLong non-coding RNAのXist遺伝子であり、タンパク質をコードしない機能的なRNAとして初めて見出された。X染色体不活性化は受精卵発生過程でおこり着床周辺期までにダイナミックに変動する。申請者らは、これまで実験動物モデルを用いて、受精胚で刷込み型Xist遺伝子発現を制御するのは、受精胚核ヒストンタンパク質のたった一つのアミノ酸の化学的修飾により制御されることを世界で初めて明らかにしてきた。モデルの発展性として、ヒトへの展開が必須であり、安定した実験系としてヒト多能性幹細胞を用いたX染色体不活化関連解析を実施した。今年度はさらに、臨床的知見から胚細胞における微小欠失が遺伝子過剰発現により顕著な発達異常を引き起こすことを示す内分泌疾患機序を提示することができた。女性固有のサイトジェネティクス動態の科学的エビデンスを発生と器官発生・制御の理解を深めるための重要な基盤知見を得ることができた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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