研究課題/領域番号 |
20H00551
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中島 友紀 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00346959)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨リモデリング / 細胞間クロストーク / 骨リモデリング制御分子 / 細胞系譜特異的な遺伝子改変マウス / 人為的制御法 |
研究実績の概要 |
本研究は、骨リモデリングの司令細胞である骨細胞と実行細胞である破骨細胞や骨芽細胞の細胞特性の解明を基盤に、骨の動的な恒常性システムの全貌に迫り、骨疾患制御法の分子基盤の確立へ道をつけることを目指している。本年度は、ゲノム編集(CRISPR/Cas)とリミッティングダイリューション法を用いて、これまでにない新たな骨細胞株クローンの樹立に成功した。新規骨細胞株は、力学的な負荷やホルモン刺激に応答し発現変動するサイトカイン、スクレロスチンを蛍光ラベルした細胞株と発光分子を付加した細胞株である。この細胞株の樹立により、蛋白レベルでのスクレロスチン発現のトラッキングが可能となった。 また、新開発された骨細胞特異的なCreマウスとtdTomatoレポーターマウスの交配から、骨細胞が特異的に蛍光発光した骨細胞特異的ラベリングマウスも順調に構築された。そして、生理的な条件下に加え、生体レベルでの運動亢進および不全モデルでの予備準備が可能となった。さらに、骨細胞特異的なCreマウスを基盤に、Cre発現細胞に特異的なジフテリアトキシン受容体を発現するマウスの作成に成功した。本マウスはジフテリアトキシン投与により、時空間特異的に骨細胞を欠失できる新モデル動物であり、骨における骨細胞の役割を生体レベルで解析できる極めて重要なディバイスになる。 骨リモデリングの実行細胞である骨芽細胞の分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞を用いた網羅的な遺伝子発現プロファイリングに注力した。また、破骨細胞の分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1の欠損細胞を用いた遺伝子発現プロファイリングにも取り組んだ。実験基盤の構築として、i-GONAD法のセッテイングと世界に先駆けた大規模なケミカルライブラリーを用いたハイスループットなアッセイ系の完成も、本年の大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度において、新たな骨細胞株クローンの樹立に成功したことは、本研究を推進する上で、大きな意味を持つ。本研究成果によって力学やホルモンの刺激に伴う骨細胞の遺伝子発現プロファイルを整える足掛かりができたと言える。 また、生体レベルでも、世界に先駆けた骨細胞特異的なラベリングマウスや骨細胞欠失マウスの構築・完成は、本領域において、研究を発展させるドライビング・フォースになることが期待される。さらに、骨リモデリングの実行細胞である骨芽細胞と破骨細胞の遺伝子プロファイリングも順調に構築され、分化責任分子や骨リモデリング分子の候補分子選抜の基盤が完成したと言える。 実験基盤となる新たなシステムとして、胚操作技術を必要としないi-GONAD法のセッテイングと予備実験の実施まで完了できたことは、今後の生体レベルでの研究の迅速化に大きく貢献すると考えられる。また、骨構成細胞の分化形態を、高速でハイスループットにビジュア化・定量化する実験系も順調に構築され、大規模なケミカルライブラリーを用いた骨疾患治療戦略を探索する足掛かりができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
骨細胞特異的な新規遺伝子改変システムを活用し、骨細胞のビジュアル化と定量化を完成させる。特に、凍結組織切片法の確立と、骨からの骨細胞分離法とFACS法による細胞集団の定量化に注力する。また、生理的な正常状態をはじめ、運動亢進や運動不全モデルを検討・施行し、生体から直接、骨細胞をセルソーターにて単離し、次世代シーケンサーを用いて全発現遺伝子情報の獲得を目指す(RNA-Seq解析、シングルセル解析)。また、新たな樹立された骨細胞株を基盤に、力学やホルモンの刺激における遺伝子発現プロファイルを試みる。さらに骨細胞欠失マウスの骨解析(マイクロCTとX線撮影、病理組織標本による骨形態計測)を実施することで、骨細胞の骨組織における役割を明らかにする。 骨芽細胞の分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞の分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1の欠損細胞を用いた網羅的な遺伝子発現プロファイルを構築し、実行細胞の分化責任分子や骨リモデリング分子の同定を目指す。選抜された候補遺伝子のゲノム編集(CRISPR/Cas)による細胞レベルでの解析を展開し、生体レベルでの解析へと繋げる。候補遺伝子の骨構成細胞特異的な遺伝子改変マウスを構築することで、世界に先駆けて骨リモデリングの制御機構を解き明かす。
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