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2022 年度 実績報告書

骨恒常性を司る骨リモデリング制御機構の解明と革新的治療戦略の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20H00551
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

中島 友紀  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00346959)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード骨リモデリング / 細胞間クロストーク / 骨リモデリング制御分子 / 細胞系譜特異的な遺伝子改変マウス / 人為的制御法
研究実績の概要

本研究は、骨リモデリングの司令細胞である骨細胞と実行細胞である破骨細胞や骨芽細胞の細胞特性の解明を基盤に、骨の動的な恒常性システムの全貌に迫り、骨疾患制御法の分子基盤の確立へ道をつけることを目指している。新開発された骨細胞特異的なCreマウスとtdTomatoレポーターマウスの交配から、骨細胞が特異的に蛍光発光した骨細胞特異的ラベリングマウスが構築され、生理的な条件下に加え、生体レベルでの運動亢進および不全モデル、老化などにおける予備準備を実施した。さらに、新ディバイスとして作成した時空間特異的な骨細胞欠失モデルを用いて、骨における骨細胞の役割を生体レベルで理解する研究を着手し、世界に先駆け、骨細胞特定的な欠失状態が骨リモデリングへどのように影響をあたるかを生体レベルで観察することに成功した。
これら生体レベルでの研究の発展は、本研究領域に大きなインパクトを当たる可能性を秘めており、特に、骨からの骨細胞の分離法とシングルセル解析を図るプラットホームが完成したと言え、さらに空間的Visium解析の予備実験等の探索も開始した。また、骨リモデリングの実行細胞である骨芽細胞の分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞の分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1の欠損細胞を用いた遺伝子発現プロファイリングに注力し、いくつかの候補遺伝子を選抜した。さらに細胞レベルでの解析から、候補遺伝子の骨特異的な改変マウスの作成した。
さらに、大規模なケミカルライブラリーを用いたスクリーニングから、骨疾患治療の創薬シーズの細胞レベルでの選抜が完了し、人為的な治療法を評価するステージへと繋がった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

世界に先駆けた骨細胞特異的なラベリングマウスや骨細胞欠失マウスが完成され、骨細胞のビジュアル化と定量化を図る実験系の構築にエフォートがかけられた。特に、凍結組織切片法の確立と、骨からの骨細胞分離法とFACS法による細胞集団のシングルセル解析は、骨細胞の細胞特性を知るうえで極めて重要な新規実験系であり、その予備実験が順調に進んでいる。
また、本研究を通じて、骨芽細胞分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1欠損細胞を用いた網羅的な遺伝子発現プロファイルを構築し、骨リモデリングを制御する可能性がある候補遺伝子の選抜に成功した。選抜された候補遺伝子の細胞レベルでの機能を明らかにするため、遺伝子ノックダウン細胞を樹立することで、骨構成細胞での機能を明らかにすることができた。さらに絞り込まれた候補遺伝子の生体レベルにおける機能を解き明かすため、骨構成細胞特異的な遺伝子改変マウスを構築および解析にステージへと発展した。また、以前同定した骨保護分子Sema3Aの骨芽細胞系譜特異的な遺伝子改変マウスを作成し、これまで不明であった男性性ホルモンによる制御機構の解明した(Endocrinology 2022)。さらに、大規模なケミカルライブラリーを用いたスクリーニングから、骨疾患治療の創薬シーズの細胞レベルでの選抜が完了した。生体での治療効果を評価するため、投与法、薬物体内動態など人為的な治療戦略の足掛かりを得た。特記すべきことに、世界に先駆け、骨と筋肉を同時に強化する創薬開発に成功し、運動器疾患の新規治療戦略の分子基盤を確立した(Bone Res 2022)。

今後の研究の推進方策

骨細胞特異的な新規遺伝子改変システムを活用し、骨細胞のビジュアル化と定量化を完成させる。特に、凍結組織切片法の確立と新規空間解析Visiumの予備実験を開始する。骨からの骨細胞分離法とFACS法による細胞集団の定量化に注力する。また、生理的な正常状態をはじめ、運動亢進や運動不全モデルを検討・施行し、生体から直接、骨細胞をセルソーターにて単離し、次世代シーケンサーを用いて全発現遺伝子情報の獲得を目指す(RNA-Seq解析、シングルセル解析)。また、ストレスのない自由運動による運動機能改善システムの新規確立に注力する。
新たな樹立された骨細胞株を基盤に、力学やホルモンの刺激における遺伝子発現プロファイルを試みる。さらに骨細胞欠失マウスの骨解析(マイクロCTとX線撮影、病理組織標本による骨形態計測)を実施することで、骨細胞の骨組織における役割を詳細に明らかにする。
骨芽細胞の分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞の分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1の欠損細胞を用いた網羅的な遺伝子発現プロファイルの構築から、実行細胞の分化責任分子や骨リモデリング分子の同定を目指す。また、新規炎症性骨破壊モデルの構築や、骨構成細胞の網羅的な遺伝情報から、細胞特性および細胞間クロストークを司る標的遺伝子も引き続き選定する。特に、すでに選抜された新規候補遺伝子の生体レベルでの骨への機能を解明し、プロジェクトゴールへとステップアップさせる。
イメージング・サイトメーターを用いた大規模なケミカルライブラリーによる骨疾患改善を目指した低分子化合物の選抜にも、さらに注力するとともに、すでに選抜された創薬シーズの生体レベルにおける骨疾患および運動器疾患の人為的な治療戦略を試みる。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] 骨のメカノバイオロジー2023

    • 著者名/発表者名
      小野岳人、中島友紀
    • 雑誌名

      BIO Clinca

      巻: 38 ページ: 21-25

  • [雑誌論文] 骨粗鬆症における骨代謝回転2023

    • 著者名/発表者名
      小野岳人、中島友紀
    • 雑誌名

      日本臨牀

      巻: 81 ページ: 58-63

  • [雑誌論文] Osteoblast/osteocyte-derived interleukin-11 regulates osteogenesis and systemic adipogenesis2022

    • 著者名/発表者名
      Dong Bingzi、Hiasa Masahiro、Higa Yoshiki、Ohnishi Yukiyo、Endo Itsuro、Kondo Takeshi、Takashi Yuichi、Tsoumpra Maria、Kainuma Risa、Sawatsubashi Shun、Kiyonari Hiroshi、Shioi Go、Sakaue Hiroshi、Nakashima Tomoki、Kato Shigeaki、Abe Masahiro、Fukumoto Seiji、Matsumoto Toshio
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 7194

    • DOI

      10.1038/s41467-022-34869-3

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Osteoblast Lineage Cell-derived Sema3A Regulates Bone Homeostasis Independently of Androgens2022

    • 著者名/発表者名
      Yamashita Yu、Hayashi Mikihito、Saito Mitsuru、Nakashima Tomoki
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 163 ページ: bqac126

    • DOI

      10.1210/endocr/bqac126

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Simultaneous augmentation of muscle and bone by locomomimetism through calcium-PGC-1α signaling2022

    • 著者名/発表者名
      Ono Takehito、Denda Ryosuke、Tsukahara Yuta、Nakamura Takashi、Okamoto Kazuo、Takayanagi Hiroshi、Nakashima Tomoki
    • 雑誌名

      Bone Research

      巻: 10 ページ: 52

    • DOI

      10.1038/s41413-022-00225-w

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Periosteal stem cells control growth plate stem cells during postnatal skeletal growth2022

    • 著者名/発表者名
      Tsukasaki Masayuki、Komatsu Noriko、Negishi-Koga Takako、Huynh Nam Cong-Nhat、Muro Ryunosuke、Ando Yutaro、Seki Yuka、Terashima Asuka、Pluemsakunthai Warunee、Nitta Takeshi、Nakamura Takashi、Nakashima Tomoki、Ohba Shinsuke、Akiyama Haruhiko、Okamoto Kazuo、Baron Roland、Takayanagi Hiroshi
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 4166

    • DOI

      10.1038/s41467-022-31592-x

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Oral bone biology2022

    • 著者名/発表者名
      Ono Takehito、Nakashima Tomoki
    • 雑誌名

      Journal of Oral Biosciences

      巻: 64 ページ: 8~17

    • DOI

      10.1016/j.job.2022.01.008

    • 査読あり
  • [学会発表] 運動器リモデリングの制御機構2023

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      第3回SAMURAI研究会
  • [学会発表] 骨リモデリングの制御機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      第48回長崎骨粗鬆症研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨リモデリングの制御機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      第32回日本リウマチ学会関東支部学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 筋肉と骨の両方を強くし運動機能を向上させる運動模倣療法の創成2022

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 動器恒常性と運動ベネフィットの制御法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      2022年度生理学研究所研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨と筋肉の連環制御機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      第21回運動器科学研究会
  • [学会発表] 骨リモデリングの制御機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      中島友紀
    • 学会等名
      第28回城北リウマチ膠原病医会
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規マウス歯周炎モデルによる歯周炎発病過程の時空間解析2022

    • 著者名/発表者名
      劉 安豪、林幹人、土谷洋輔、岩田隆紀、中島 友紀
    • 学会等名
      第7回日本骨免疫学会
  • [学会発表] 自己免疫性関節炎における傍関節性骨粗鬆症のメカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      小松紀子、Stephanie Win、Minglu Yan、Nam Cong-Nhat Huyn、塚崎雅之、寺島明日香、中島友紀、高柳広
    • 学会等名
      第7回日本骨免疫学会

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公開日: 2023-12-25  

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