研究課題/領域番号 |
20H00552
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 美加子 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (40271027)
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研究分担者 |
奥山 克史 朝日大学, 歯学部, 准教授 (00322818)
山下 弘巳 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40200688)
松田 康裕 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (50431317)
山本 洋子 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (60448107)
岡本 基岐 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60755354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 根面う蝕 / 象牙質 / PIXE/PIGE法 / μCT / 動物モデル / ミネラル密度 |
研究実績の概要 |
本申請では、従前の歯科臨床をバイオミネラリゼーションを基軸とした生物学的なう蝕予防・治療へと大きく変換させるという理念のもと、量子・X線ビームを応用した原子・電子レベルの超精密構造・機能解析によって、う蝕の発症および進行抑制に歯質構成元素が如何なるメカ ニズムで相互に作用しながら関与しているかを解き明かすことを目的としている。 2020年度はin vitroにて、ヒト大臼歯の象牙質にCa、 F、Sr、Zn、Cu、Mgの配合率を調整したセメント材を1-3ヶ月間作用させ た後、歯質構成元素の抗う蝕性の評価を、試験前後でのμCTによるミネラル密度の変化に続いて、PIXE/PIGE法、X線結晶回折、X線光電子分光法によ ってイメージングし、元素分布・濃度および化学結合を分析した。その結果、FとZnイオンが象牙質に取り込まれて、特にZnがOと共有結合を形成することで、歯質の耐酸性が向上することがわかった。 2021年度は2020年度に確立した方法を、in vivoラットう蝕治療モデルに作用させて、歯質構成イオンがエナメル質および象牙質に取り込まれる様相を、μCTによるミネラル密度の変化とPIXE/PIGE法にて検索する方法を確立した。まず、う蝕治療モデルの作成にあたっては、う蝕の部位および進行度を詳細に検討し、コントロールすることができた。さらに、μCTによるミネラル密度計測では、実験前後の状態をin vivo条件での測定条件を確定し、PIXE/PIGE法にて世界で初めてin vivoう蝕モデルにおいてマルチ元素の動態を経時的に測定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はin vivoラットう蝕治療モデルを作製して、歯質構成イオンがエナメル質および象牙質に取り込まれる様相を、μCTによるミネラル密度の変化とPIXE/PIGE法にて検索する方法を確立した。う蝕治療モデルの作成にあたっては、う蝕の部位および進行度を詳細に検討し、う蝕の重症度をコントロールすることができた。さらに、μCTによるミネラル密度計測では、実験前後の状態をin vivo条件での撮影条件を確定し、PIXE/PIGE法にて世界で初めてin vivoう蝕モデルにおいてマルチ元素の動態を経時的に測定することに成功した。このように、in vivoラットう蝕治療モデルの実験基盤構築に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2021年度に確立したin vivoラットう蝕治療モデルを用いて、う蝕病変の長期経過と歯質へのイオン分布と濃度の関連性を明らかにする。すなわち、健全象牙質、う蝕影響象牙質、およびう蝕象牙質へのマルチイオンの取り込みと、う蝕動態の関連を探索することにより、実際のう蝕が多発する口腔でう蝕発症予防ならびに進行抑制に効果的なイオン分布と濃度の閾値を明らかにする。さらに、う蝕抑制に効果的なイオンの組み合わせと濃度分布を明らかにし、う蝕予防および治療器材の開発構想を練る。
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