研究課題/領域番号 |
20H00556
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
床次 眞司 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (80247254)
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研究分担者 |
細田 正洋 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (30457832)
小山内 暢 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (40514138)
大森 康孝 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 准教授 (70637602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射線被ばく / 内部被ばく / 呼吸気道モデル / 放射性エアロゾル / 粒径分布 |
研究実績の概要 |
放射線内部被ばくの環境を明らかにするための実環境における放射性微粒子データの取得、およびコンピュータ断層撮影像(CTデータ)から呼吸気道の形態学的情報の取得をした。 実環境における放射性微粒子データの取得では、エアロゾルモニタを用いてナノ・メートルサイズからマイクロ・メートルサイズの微粒子の粒径分布を測定するとともに、放射性微粒子の放射能中央径を評価した。測定地点は北海道、青森県、福島県、鹿児島県、沖縄県とし、道路上、海岸、森林、観光用洞窟、活火山近傍、温泉など様々な環境で測定を行った。これらの測定地点では、放射能中央径は20 nmから300 nmの範囲であった。粒径分布は概ね2峰性を示したが、海岸や、内陸地点でも降雨後は1峰性の分布を示した。降雨後については、ウォッシュアウト効果により10 nmオーダーの微粒子が除去された結果、約200 nmの放射能中央径となる1峰性の粒径分布になったと考えられた。 呼吸気道形状に関する評価では、前年度に引き続き、弘前大学附属病院の協力によりCTデータを取得し、呼吸気道の形状を特徴づける気管の断面積や分岐角等を画像から計測した。解析対象は、11歳から82歳の男女86例(男36例、女50例)であった。断面積については、男女間では大きな差は概ね認められなかったが、放射線防護委員会が採用する呼吸気道モデルと比較して日本人の気管の断面積は大きい傾向にあった。分岐角については、男女間で明らかな差は認められなかった。解析結果の信頼性を確保するために3名が同じCTデータを用いて解析し統計分析した結果、有意な差を認めなかった。以上の結果を踏まえ今までに取得した呼吸気道の形態学的情報を基に、3Dプリンタを用いて呼吸気道の模型を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実環境における放射性微粒子データの取得では、前年度から調査地点数を拡大させ、北海道から沖縄県までの大規模都市圏、小規模都市圏、海岸、山間部、活火山近傍、温泉など日本の地理的特徴を踏まえて微粒子の粒径分布を取得し、放射能中央径を評価するなど、計画通りに研究が進捗していると評価できる。呼吸気道形状の分析では、新型コロナ感染症の終息に伴い症例数を前年度の16例から86例へ大幅に増やすことができ、呼吸気道の模型を試作することができた。
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今後の研究の推進方策 |
実環境で取得した放射性微粒子のデータセットを基に、物理学的線量評価モデルを用いて線量換算係数を算出し、日本の特徴的な地理的環境による線量換算係数の分布を評価する。また、病院の協力を得て呼吸気道の形態学的情報の取得を継続するとともに、呼吸気道の模型を曝露装置内で放射性微粒子に曝露させ、呼吸気道の形状が放射性微粒子の気道内への沈着に与える影響を実験的、モデル計算的に明らかにする。
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