研究課題/領域番号 |
20H00574
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
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研究分担者 |
原 太一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00392374)
川西 範明 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (00706533)
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳 / うつ / バイオマーカー / 炎症 / 機能性食品 |
研究実績の概要 |
現代社会においてうつ病などの精神疾患に罹患する患者は増加傾向にあり、全世界的な問題になっており、うつ病患者に対する効果的な予防あるいは改善するための治療法の開発が求められている。うつ病患者においては脳の海馬および前頭前野の萎縮および神経細胞の樹状突起のスパインの密度低下が観察されることから、神経可塑性異常がうつ病の発症に関与することが提唱されている。これらの構造的な変化はストレスホルモンの慢性的な分泌異常が重要な役割を担うことが示唆されている。有酸素運動は慢性的なストレスホルモンの分泌を抑制し、脳機能やさまざまなストレス応答を軽減することによって心身の改善に寄与することが知られている。本研究では、まずストレスホルモンがエクソソームプロファイルに及ぼす影響を培養細胞実験により検討し、運動のストレス制御に対するエクソソーム中のバイオマーカーやストレス制御法を開発することを目的として研究を行った。また、拘束ストレスによるうつ病モデルマウスを用いて、自発運動が脳海馬および血清エクソソームにおけるmiRNAプロファイルに及ぼす影響を検討した。 その結果、ストレスホルモンで処理した細胞の分泌エクソソームは、抗炎症に関するタンパク質やmiRNAが特異的に内包されていることを見出した。現在、これらのmiRNAの標的遺伝子の同定や細胞間コミュニケーションによる生体機能調節におけるストレスホルモン応答性に関するエクソソームの役割について機能解析を行っている。また、自発運動は拘束ストレス負荷マウスの脳海馬における16種類の miRNA の発現を変化させることを見出した。現在、マウスの自発運動によって血清エクソソームで変動するmiRNAの同定を進めており、運動によるうつ症状を軽減させる効果の分子メカニズムの解明を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
培養細胞実験では、様々な組織由来の細胞をストレスホルモンで処理し、分泌されるエクソソームを回収し、内包されるタンパク質やmiRNAを網羅的に分析した。動物実験では、マウスに拘束ストレスおよび自発運動を4週間負荷して、脳海馬および血清エクソソームを採取し、含まれるmiRNAを網羅的に分析した。また、食と腸・脳臓器連間による脳機能制御機構の解明と機能性に関するバイオマーカーを探索するため、腸由来エクソソームの分泌に関わる食品成分のスクリーニングを行うことができた。さらに、運動・ストレスによる骨格筋由来エクソソームの分泌についても検討を実施し、運動トレーニングにより分泌されるエクソソームの機能解析と生理的役割の解明を進めつつある。具体的には、マウスから採取した腓腹筋を細切して、培地中で24時間培養し、培養上清中のエクソソームから抽出したRNAからmiRNAシーケンス用のライブラリーを調製して、大規模並列シーケンサーにより塩基配列情報を取得した。シーケンスデータはmiRBaseを参照としたマッピングによりmiRNAを検出して、リード数のカウントおよび差次的発現解析を行っており、さらに研究成果の論文化が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
エクソソーム中には、他の細胞機能の制御に関わる遺伝子制御核酸(マイクロRNA)やタンパク質が含まれており、これらの情報を解読することで食品成分による脳機能制御の分子機構を理解するための重要な分子情報を得ることが可能である。今後、分泌されたエクソソームの神経細胞や脳機能への影響、内包物の分子情報を解析することで、脳機能や病態との関連を明らかにしていきたい。また、分泌されたエクソソームの神経細胞や脳機能への影響、内包物の分子情報を解析することで、脳機能や病態との関連を明らかにしていく。さらに、前年度までに行った実験結果を論文化して発表する。
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