研究課題/領域番号 |
20H00579
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
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研究分担者 |
山下 茂 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30362833)
ルガル フランソワ 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (50584299)
Avis David 京都大学, 情報学研究科, 非常勤講師 (90584110)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 量子コンピュータ / 量子優位性 / 量子回路設計理論 / 浅層量子回路 / 凸多面体の量子情報 / 量子エラー緩和 / Bellの不等式 / 量子非局所性 |
研究実績の概要 |
初年度の研究では、研究代表者のところで利用可能になったIBMの53量子ビットの量子コンピュータを用いて、一般化Bell不等式の破れの実機計算で、ノイズ付き量子コンピュータで情報処理する基礎力を高め、それが次年度以降の研究展開に資することになり、2022年に量子エラー緩和提案ののちに65量子ビットマシンでの量子グラフ状態に対する一般化Bell不等式の破れ研究までの一連の成果を上げることにつながった。理論面ではノイズ付き量子コンピュータでは、深さが浅い量子回路(浅層量子回路)でないと、ノイズが主要因となってしまうため、浅層量子回路の理論解析も行った。浅層量子回路での量子優位性について既に初期の成果を出しつつあった分担者のLe Gallの研究をさらに進め、協力研究者に大学院生の長谷川の参加を得て、量子ソフトウェア研究会で発表することができた。この発表で長谷川は学生奨励賞を受賞する評価を得た。量子分散研究に関する基礎研究も進めることができ、日本の研究者がこのテーマで種々の成果を出す素地を築いた。量子回路理論については、分担者の山下が中心となって研究を進め、Tゲート数の削減やMPMCTゲートの近接アーキテクチャでの展開などの成果をあげて、次年度の量子回路設計の招待解説論文を公開する成果に発展している。量子重力理論の共形場理論での笠・高柳の不等式により導かれるエントロピー錐を計算により解析する研究を分担者のAvisがスタートさせ、独自の凸多面体解析プログラムを駆使しての計算を開始した。このことが再繰越年度での論文発表につながっている。このように5年にわたる本研究において、計画にしたがって各メンバが研究を推進するとともに、大学院生の参画も得てオンラインでの議論を行ってチームとしての研究取組も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍が社会に大きな影響を与え始めるなか、初年度は個々のメンバの研究推進から始まったが、大学院生の派遣などを通して本研究組織での連携も開始することができた。また発表の機会が限られる中、組織内での量子計算教育ビデオの共有も行い、当初計画に沿った研究を年度後半進められるようになり、研究実績の概要にあるような成果を着実に上げることができている。これらのことから、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断している。
なお、量子コンピュータ実機利用では、当初53量子ビットノイズを制御する方法で実機にて調査するところからスタートし、実機特有のエラーもあり成果が出るのは2年度目以降となったが、それによって量子エラー緩和という新規テーマを明確に認識・解析することができる端緒ともなり、以降の年度での研究対象になっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究を通して明らかになった量子コンピュータのエラー緩和の重要性を踏まえ、特に測定におけるエラー緩和に注力して研究を進めることとして、それが2年度以降の量子コンピュータ実機を用いた研究で成果を上げることにつなげることを目指した。量子優位性については、定数深さの量子浅層回路の次のレベルを検討する。量子回路設計の理論を広く周知していく活動にも取り組むこととしている。量子情報面でのエントロピー錐の計算解析では、関連分野との接点も求めていく。そしてオンライン環境での議論を通して、研究組織全体としての議論をより深めることに取り組む予定である。
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