研究課題/領域番号 |
20H00589
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
佐藤 健哉 同志社大学, 理工学部, 教授 (20388044)
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研究分担者 |
橋本 雅文 同志社大学, 理工学部, 教授 (10145815)
高田 広章 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (60216661)
渡辺 陽介 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (80532944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | V2X通信 / 協調型自動運転 / 情報通信プラットフォーム / センサ情報共有 |
研究実績の概要 |
本研究では,情報共有や走行調停を行う協調型自動運転を実現するため,ネットワーク仮想化技術により直接通信(DSRCやPC5)のアドホックネットワークと携帯電話基地局(Uu)経由のモバイルネットワークを効率的に併用し,各車両のセンサ情報をストリーム技術で処理することで接続台数が増加した場合のスケーラビリティを向上させ,また,クラウドのみではなくモバイルエッジコンピューティングを利用してダイナミックマップを分散処理することで,信頼性向上と低遅延を実現可能にすることである. 従来の方式は,各車両が無線の届く範囲に車両情報を放送(ブロードキャスト)とし,その情報を受信できた他車両が安全走行に活かすという方式であるため,特定の車両間において意図的に情報共有することができなかった.本研究では,各車両に搭載されたモバイルネットワークを利用して他の車両の位置や動きを把握することで,送信する情報を的確に伝えることができる.ここでは,移動体通信における位置情報を考慮したOpenFlowによるネットワーク切替え手法を提案し,シミュレーションにより通信効率が向上することを示した.また,情報共有の際に需要になる通信のセキュリティ(特になりすまし)についての対策も検討した. 移動体通信における位置情報を考慮したOpenFlowによるネットワーク切替え手法に関して発表した研究代表者指導の学生である塚崎拓真が,車両位置相互監視に基づくなりすまし検知手法のロジスティック回帰分析による性能向上について発表した研究代表者指導の学生である山村竜也がそれぞれ情報処理学会全国大会学生奨励賞を受賞した.また,自動運転車内でのPC作業が起因となる車酔い緩和手法に関して発表した研究代表者指導の学生である畑山諒太が,情報処理学会ITS研究会奨励発表賞を受賞するとともに,自動車技術会大学院研究奨励賞も受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により,学外での実証実験がほとんどできなかったが,シミュレーションを利用することで,本研究で提案するネットワークアーキテクチャや分散システムに関する性能評価を実施した. (1) 移動体通信の効率化:ネットワーク仮想化の技術の1つのOpenFlowを利用し,直接通信と携帯回線のモバイルネットワークを併用するアーキテクチャを構築した.シミュレーションを行い,移動環境において通信を行う際の通信品質についての検討を行い,携帯回線やアドホックネットワークのみを用いた手法と比較し,提案手法はスループットが増加し,通信遅延時間も低減する結果となり,通信品質が向上したことを確認した. (2) センサ情報の精度・信頼性向上:各車両に搭載されたレーザレーダで計測したデータ(点群)は,それぞれの車両の座標系において計測されているため,この情報を複数の車両間で共有し利用するためには,座標系を統一する必要がある.この情報の精度を向上させるために,点群の中から立体物平面やポール状物体などの特徴的な形状を抽出し対応付けた(粗位置合わせ)のちに,これを初期値とすることで全体をマッチングさせる手法を開発した.学内近辺の狭い範囲ではあるが,実際に評価実験を行い精度が向上することを示した. (3) 多数車両の走行経路調停機構: 移動する車両情報を静的地図に関連付けて管理するダイナミックマップを利用することによって,自動運転車がこれから走行をする経路の時間と空間を事前に予約し,他の車両を排除することでよりスムーズな走行を可能にする時空間グリッド予約という考え方を確立した.これに加えて,ダイナミックマップでの時空間グリッド予約に料金徴収による優先度を設定し,仮想通貨を用いて予約を実現する仕組みであるマイクロロードプライシングについて,シミュレータを利用して有効に動作することを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はコロナ禍により,予定していた学外での自動運転車両による走行実験がほとんど実施することができなかったが,2021年度は,限定的ではあるが学外での走行を含めた実証実験を併せて実施する予定である. 米国,欧州,中国などでは協調型自動運転が直接通信を行うための通信方式に割り当てら れている5.9GHz帯であるが,国内において一般には利用できない.日本では総務省が5.9GHz帯の割当を再検討する周波数再編アクションプランが掲げられており,研究代表者は総務省のプロジェクト(5.9GHz帯へのセルラーV2X方式によるV2Xシステムの導入に係る技術的検討)である調査検討会の主査を担当しており,この5.9GHz帯の直接通信の利用を特別に許可されたエリアにおいて実験を実施する予定である. また,協調型自動運転の基盤となる本研究で検討しているネットワークアーキテクチャお よびセンサ情報の融合方式について,将来的に広く研究実験を行える環境についても模索する予定である.
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備考 |
名古屋大学と同志社大学は新たな研究体制として「ダイナミックマップ2.0の高信頼化技術に関するコンソーシアム」(DM2.0高信頼化コンソ)を立ち上げ、実社会でのDM2.0PFの運用実績を上げるための研究活動を実施しています。
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