研究課題/領域番号 |
20H00590
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
冨山 宏之 立命館大学, 理工学部, 教授 (80362292)
|
研究分担者 |
佐藤 寿倫 福岡大学, 工学部, 教授 (00322298)
原 祐子 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20640999)
李 陽 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20821812)
請園 智玲 福岡大学, 工学部, 助教 (50610060)
三浦 典之 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (70650555)
崎山 一男 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80508838)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Approximate Computing / 物理セキュリティ / IoT |
研究実績の概要 |
スケーラブルな物理セキュリティを可能にする近似計算の設計基盤と理論の構築に向けて、(a)スケーラブルな物理セキュリティを可能にする近似演算回路の開発、(b)物理セキュリティ強度要求に応じたACマスキング回路の自動合成技術の開発、(c)スケーラブルな物理セキュリティに関する安全性指標の理論の構築について研究を実施した。 サブテーマ(a)に関しては、FPGAを対象とした32ビットの可変精度近似乗算器の開発、省電力なデータ転送のためのApproximate Encodingの評価、クロック由来のノイズを乗せることによるサイドチャネル耐性のある回路構成の提案などを行った。さらに、演算器の基本構成単位である半加算器の電源および電磁波サイドチャネル漏洩を低減するためのカスタム回路を設計し、回路シミュレーションにてその効果を評価した。 サブテーマ(b)に関しては、昨年度に引き続き、可変精度近似乗算器を利用するカスタムハードウェアの高位合成手法を開発した。また、AESや軽量暗号アルゴリズムChaskeyの専用ハードウェアを高位合成の最適化を利用してFPGA実装し、高位合成の最適化が電力解析攻撃への脆弱性に与える影響をより定量的に評価した。 サブテーマ(c)に関しては、NISTの認証付き暗号候補をソフトウェア実装し、入力データ長に対する処理性能(レイテンシ)を調査した。その中で、加算器を用いる候補に対して、マスキング手法を検討し、サイドチャネル攻撃耐性の評価環境を構築した。また、機械学習の1つであるGraph Neural Network(GNN)を用いて、プログラム記述からの情報漏洩を定量的に評価する手法を検討した。さらに、機械学習を用いて、ハードウェアセキュリティのデータセット(演算器等のIP)を大量に生成するフレームワークの構築を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した通り、本研究課題は3つのサブテーマから構成される。3つのサブテーマすべてについて、おおむね順調に進展しており、国内および国際会議にて論文発表を重ねている。 本研究は、5つの研究機関の7名の研究者による共同研究である。2020年度に引き続き、2021年度も対面での共同研究が大きく制限されたが、大きな支障はなく、共同執筆による論文発表も複数回行われた。 2021年度は、当初計画にはなかった新たな展開も得られた。例えば、Graph Neural Network(GNN)を情報漏洩の定量的評価に用いることは、本研究を開始した当初は想定していなかったが、近年のGNNの急速な進化を踏まえ、このアイデアを発案し、研究を進めた。また、機械学習を用いたハードウェアセキュリティ向けデータセット生成フレームワークについて、ドイツの大学と国際共同研究を実施したことも、当初計画にはなかった成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
1年目の2020年度は、3つのサブテーマが緩やかに連携しながら、各々の要素技術の研究開発を行った。2年目の2021年度は、サブテーマ間の連携を強めながら、各要素技術を発展させた。3年目となる2022年度は、各サブテーマで開発してきた技術を評価し、その評価結果に基づいて改良を行う。特に、最終年度となる2023年度に向けて、7名の研究者全員が協力し、実証実験(Proof of Concept)のためのプロトタイプシステムを開発する。また、AESやChaskeyなどの暗号アルゴリズムだけでなく、近年重要性が増しているニューラルネットワークなどのAIアルゴリズム/モデルのセキュリティについて、当初計画では2023年度に実施する予定であったが、前倒しで研究を進める。 2020年度と2021年度は、コロナウィルスの感染防止のため、オンラインで研究打合せを実施した。今後の感染状況によるが、2022年度は可能な限り対面での議論および共同開発を実施する。
|