研究課題/領域番号 |
20H00597
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
栗木 一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80282838)
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研究分担者 |
山口 真美 中央大学, 文学部, 教授 (50282257)
金子 沙永 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60763183)
金沢 創 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (80337691)
楊 嘉楽 中央大学, 研究開発機構, 機構助教 (80844703)
上野 賢一 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 技師 (90332337)
塩入 諭 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (70226091)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 色覚 / 脳機能計測 / fMRI / EEG / 色カテゴリー / クラスター解析 / SSVEP |
研究実績の概要 |
まず,脳内の色情報表現を調べる研究として,脳波(EEG)による研究成果を報告した.研究代表者の栗木と分担者の金子は,視覚刺激の点滅に対応して発生する誘発脳波(SSVEP)を用いて,成人の実験参加者から色の違い(色相)に対する SSVEP 振幅の変化を測定した.SSVEP振幅は紫-緑の方向で強く,青-黄色の方向に弱い形状をしめした.この実験の色は,錐体の応答に基づく空間で均等になるよう統制されたため,実験結果の SSVEP 振幅は脳内における色情報表現の変換を示している.計算モデルによる評価の結果,今回測定したSSVEP振幅は,知覚的な色の鮮やかさに関連している可能性を示した.この成果は国際的学術誌 CerebralCortexCommunications に発表した. 脳内の色情報は,最終的には細かい色の違いを超えてグループとして扱う色カテゴリーの形になる.研究代表者の栗木と分担者の塩入は,台湾の研究者グループと共同で中国語(北京語)の色カテゴリーの特徴に関する研究をおこなった.クラスター解析を用いる方法により,言語や語彙の違いによらず,同一の色グループと認識された色の広がりに基づいた評価ができる.その結果,日本語・英語・中国語(北京語)の間で基軸となる色名(基本色名)に対応する色カテゴリーに高い類似性があった.この結果は色のカテゴリー化に共通の法則性があることを示す.この成果は国際的学術誌 Journal of Vision に発表した. 研究代表者の栗木は北米ネバダ大学リノ校の共同研究者 Mike Webster 教授と共同で,異常3色覚者の脳活動の分析に関する研究をおこなった.異常3色覚者は3種類の錐体の一部の機能が不十分だが,脳内ではそれを補うように活動していることを fMRI 計測により示した.この成果は国際学術誌 Current Biology に発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳波による脳活動研究の初期の実験結果が得られ,一定の成果が対外的に発表できているため.
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今後の研究の推進方策 |
SSVEP振幅の個人差を元に,その背後にある基底を求める解析を行い,成果発表をする. 乳幼児において同様の手法で SSVEP 振幅の傾向を測定し,視覚の発達段階における脳内の色情報処理メカニズムの解明について研究を進める. 色の見え方を評価する際に,微小な違いを評価するカラーアピアランス課題と,色のカテゴリー分類を行うカテゴリー課題をおこなっている最中の脳活動を計測し,課題の回答と一致する脳活動を示す部位を特定する方法で fMRI により脳内情報表現の推移を研究するための実験を実施する.
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