研究課題/領域番号 |
20H00603
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 眞也 京都大学, 情報学研究科, 教授 (20396162)
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研究分担者 |
吹上 大樹 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 研究員 (50869302)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視覚系シミュレータ / 運動視 / メタマー / 人工神経回路 / 映像メディア技術 |
研究実績の概要 |
本研究は、おもにモデルの構築とモデルの評価を並行して進めている。 【モデル構築】これまで運動視に関するモデル構築は、おもに分析・構成型のアプローチで進んできた。一方、最近はデータ駆動型のアプローチを用いて、動画から運動フローを推定する人工神経回路を一気通貫(End-to-End)で学習した研究も報告されている。本計画では、これらの先行研究を参考に、分析・統合型とデータ駆動型のアプローチを融合して、運動視処理全体のモデル構築を行う。令和2年度は、データ駆動型で構築された視覚物体認識を行う人工神経回路(畳み込み神経回路、CNN)と人間の視覚系の違いをおもに空間周波数特性という観点から分析した。そして、人間の乳児の視力が大人と比べて悪く、その後良くなっていくという発達過程を考慮に入れて、高空間周波数をカットしたボケ画像に対する物体認識をCNNに学習させることを試みた結果、ボケ画像への学習がCNNを人間に近づける一つの手立てとなることを明らかにした。さらに、人工神経回路の内部状態の分析に対する基本的なノウハウを蓄積した。 【モデル評価のための心理物理実験】モデルを人間に近づけるために、さまざまな視覚刺激に対する人間の反応とモデルの反応を比較する必要がある。評価に使う刺激には、視覚科学実験で用いられてきた人工刺激と自然画像(動画)を用いる。令和2年度は、人工刺激や自然動画に対する知覚運動ベクトルを測定する心理物理実験手法の予備的検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GUP計算機を購入し、人工神経回路を使ったシミュレーション実験を行う環境を整備した。ボケ映像に対する学習の効果に関して検討し、限定的であるものの人工神経回路を人間に近づける効果を確認することができた。令和3年2月までに、 事前準備、計算機実験、人工刺激による心理物理実験を行い、令和3年3月までに、研究成果取りまとめを行う予定であったが、コロナ禍で本プロジェクト専任のポスドク研究員の採用が令和3年度4月にずれ込むなどしたため、予算を繰り越して、令和3年度8月までに予定の研究を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
自然画像に近い動画を用いて、人間の知覚するオプティカルフローを新しく開発した心理物理実験で測定し、既存の運動視モデルの予測と比較し、その差を埋めるようにモデルを改良していく。
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