研究課題/領域番号 |
20H00611
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川崎 洋 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (80361393)
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研究分担者 |
佐川 立昌 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (30362627)
小池 賢太郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (30781992)
古川 亮 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (50295838)
巻 俊宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50505451)
高松 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 客員教授 (90510884)
THOMAS DIEGO 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (10804651)
岩口 尭史 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (50845526)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アクティブ3次元計測 / 水中ROV / 水中AUV / 水中SLAM / 水中構造物計測 |
研究実績の概要 |
水中での形状計測に対する関心が高まっていることから、本研究では、高密度・高精度に広範囲の水中の3次元形状を計測する手法を開発する。提案手法では、ROVやAUVなどに水中ロボットに、本課題で開発した計測装置を搭載し、移動しながら水中の3次元形状を取得・統合することで、GPSの使えない水中において広範囲の形状計測を実現する。 具体的には、水中3次元計測の課題である、①屈折や光量減衰、ベースライン不足によるアクティブ計測の精度低下、②電波が届かず見通しの悪い水中での自己位置推定の困難さ、さらに③複数の3次元形状を統合・解析手法を提案する。 初年度は、水中アクティブ3次元センサの基礎アルゴリズムの開発および、水中ロボットを用いたテストを屋内プールにて実施し特許出願した。 2022年度は、開発した水中アクティブ3次元センサを用いた性能評価と、広範囲計測のためのアルゴリズム開発を行った。具体的には、広範囲計測のため、3次元センサを動かしながら複数フレームを取得し、それらを統合した3次元形状と、各フレームにおけるセンサの位置姿勢を同時に最適化するアルゴリズムを開発した。この時、移動経路にループが存在する場合、ループの端点同士が一致する拘束を用いて、結果が安定するアルゴリズムを開発した。その結果、本手法により誤差が減少することを確認した。これら成果を査読付き国際会議へ投稿し、採択され発表を行った。 並行して、水中ロボットに3次元センサを設置して水中で形状計測するための実験を屋外(横浜港湾)にて実施した。その結果、屋外では水質が非常に悪いこと、また水中GPSの位置決め精度が空中のGPSなどに対して非常に低いことなどが判明した。そこで、この問題を解消するため、音響ソナー(DVL)を用いた新たな自己位置推定手法を開発することとし、その基礎アルゴリズムを開発した。その成果を、査読付き国際会議へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、以下に述べる大きく3つのテーマで研究開発を行った。それぞれの進捗状況を鑑みるに、概ね順調に進展していると言える。 (A)アクティブ・ステレオ3次元復元アルゴリズムの性能向上:前年度に開発した水中アクティブ3次元アルゴリズムは、ラインレーザを検出し、光切断法で復元する手法であるが、屋外などの港湾では水質が悪く、ラインの検出が成功しにくいため、深層学習により水質劣化をリトレーニングおよびドメイン適合させることで、検出の安定化を実現した。また、水質の悪い環境においてもキャリブレーションを安定させるため、マーカー検出においても、水質劣化をシミュレートしたAugmentationによる深層学習により、安定した処理を実現した。これら成果は著名な査読付き国際会議ICIPで採択され発表した。 (B)ラインレーザ3次元センサで得られたスパースな3次元形状の統合:ラインレーザ3次元センサを複数フレーム連続して用いて、得られた形状を統合するアルゴリズムを開発した。これは、センサで得られたカメラの位置姿勢を初期値として、統合した形状同士に矛盾がないように、3次元形状およびカメラの位置姿勢を最適化するバンドル調整アルゴリズムからなる。成果は著名な査読付き国際会議であるIROSに採択され発表した。 (C)屋外でのSLAMのための基礎開発:アクティブ計測を連続的に実施し、広い形状を取得する水中SLAMを屋外環境で実施するための基礎システムの開発を行った。この目的のため、水中ロボットに、開発した3次元センサの他、水中GPS(音響ベース)、音響ベースの速度センサ、および、音響2次元ソナーを設置し、それらのデータを同期して保存するロガー・システムを開発した。取得したデータを可視化し、データが正しく計測されていることを確認した。このデータ取得システムを今後用いて、広範囲の3次元マップを取得する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまで開発してきた水中アクティブ3次元センサを用いて、実験プール以外で計測するために必要な精度向上や安定化を目指す。精度向上に関しては、3次元センサを動かしながら得られた複数フレームの3次元復元結果を、センサの位置姿勢と同時に最適化するアルゴリズムを開発する。具体的には、個々の光切断法によるスパースな3次元点群と、同時に撮影された画像特徴点を用いて得られた個々のカメラ位置姿勢を初期値として、バンドル調整により全体最適化する手法を開発する。さらに移動経路にループが存在する場合、ループの端点同士がクローズする拘束を用いて、より結果が安定するアルゴリズムを開発する。また、ノイズが多い場合、共面性復元の解が不安定化することが起こるため、その原因究明と解決策を検討する。 また、並行して、水中ロボットに3次元センサを設置して水中で形状計測するための実験を実施する。水中ロボットは、九州大にあるBlueRoboticsおよび、東京大学にあるTritonを対象として、九州大学にある回流水槽および東大巻研究室の管理する実験水槽または平塚の海域試験場にて計測テストやアルゴリズムの検証、精度評価等を実施する。その際に、水中構造物や障害物を検知し、衝突を回避する経路探索手法を開発する それらの計測結果を基に、水中構造物の計測・検査システムの開発を行う。前年度に引き続き、現状の港湾構造物の見学や維持管理者との打ち合わせ、さらに現地でのテスト計測を実施する。実験や打ち合わせを通して、水中構造物検査の課題を明らかにするとともに、具体的なシステム開発の計画を立てる。
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