研究課題/領域番号 |
20H00619
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20511249)
|
研究分担者 |
伊野 浩介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00509739)
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30548681)
野村 慎一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50372446)
佐藤 佑介 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60830560)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 分子ロボティクス / DNAナノテクノロジー / 電気化学 / 人工細胞 / ソフトマター |
研究実績の概要 |
本研究では、「マクロファージ型分子ロボット」を構築すると伴に、ディジタルの世界と当該分子ロボットをつないで、ディジタルハイブリッドな分子ロボットを構築することを目的としている。 代表者・瀧ノ上は、分担者・佐藤と協力して、分子ロボットへのターゲット分子のセンシング機能の付与の実験を行った。分子ロボットのボディとしてDNAゲルを用いた。DNAゲルは、Y字型DNAナノ構造をネットワーク状に集積させて構築した。DNAゲルのマイクロRNA(miRNA)のセンシング機能を発展させ、DNA液滴による分子コンピューティングによって、miRNAパターンの判定をできるように改良した。アプタマや抗体などを用いて、生体的な小分子やmiRNA、細胞表面の抗原などを認識して、ある種のコンピューティングを行えるDNAゲル(知的な振る舞いができるDNAゲル)を確立するため、細胞を包み込んで阻害するようなメカニズム(人工食作用)を導入するため、抗体やアプタマ等を効率よくDNAゲル・DNA液滴の内部に修飾して、機能を発現できるよう、条件検討をした。さらに、光異性化を示す化学修飾をしたDNA液滴を作成し、温度変化に依らなくてもDNA液滴の流動化を実現できる方法を見出し、DNA液滴による分子ロボットと、細胞との融合に道筋をつけた。分担者・尾上は、代表者・瀧ノ上と協力して、DNAアプタマーを用いた分子認識センサをDNAゲルの増幅機構を用いて取り組んだ。分担者・野村は、標的となる細胞を超えるサイズの人工多細胞型分子ロボットの調製方法を見出し、報告した。分担者・佐藤は、代表者・瀧ノ上とともに、DNAゲルをカプセル形状に自己集合させることに成功した。分担者・伊野は、代表者・瀧ノ上と協力して、DNAハイドロゲル内での細胞培養に成功し、ハイドロゲル内での細胞呼吸の電気化学計測に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者・瀧ノ上は、分担者・佐藤と協力して、DNAゲル・DNA液滴を利用した分子ロボットへのターゲットセンシング機能の搭載が完了した。具体的には、計画書にある通り、生体由来の核酸(ここでは、マイクロRNA(miRNA))をセンシングして、ある組み合わせだった場合にのみ、DNA液滴の相分離を誘起して、動的なDNA液滴の分裂を示す。これを発展させるために、核酸だけでなく、細胞表面のタンパク質を認識できる抗体をDNA液滴に修飾するための方法を確立した。さらに、分担者・野村と協力して、ターゲットとなる細胞の選定を行っている。また、分担者・尾上と代表者・瀧ノ上は、DNAゲルとDNAアプタマーを繋げるためのDNAのデザインを行い、反応が設計どおりに進むかを確認した。分担者・野村は、人工多細胞型分子ロボットの調製に成功し報告した(論文印刷中)。この構造に対して外部からのリモート刺激によるmm/s以上のスケールの運動にも成功しており、論文作成中である。本法を用いることで望みの水溶液を安定に多細胞構造内部に封入することが可能であり、疎水性の分子の導入も容易であることから、DNA液滴やDNAゲルの制御系を高濃度に生理環境で活動させるための保護スーツとしての利用が期待できる。分担者・佐藤は、DNAタグ付き脂質の合成に成功した。この技術をベースとすることで、さまざまな分子にDNAタグを修飾できることが期待できる。分担者・伊野は、DNAの電気化学計測として、ルテニウム錯体を用いた電気化学発光法を開発した。これにより、ハイスループットなDNAゲルビーズの計測が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
代表者・瀧ノ上は、DNA液滴による生体分子・細胞のセンシングとDNA液滴の光制御の実験をさらに進める。「マクロファージ型分子ロボット」を実現するため、ターゲット細胞のセンシングをさらに進める。細胞表面のタンパク質に特異的な抗体またはアプタマを選定し、DNA液滴に修飾して機能を確認する。また、生体分子のセンシングに関しては、より複雑なパターンを認識させる方法も検討するとともに、センシングの感度を上げるためのシグナル増幅機構についても検討する。分担者・尾上は、DNAアプタマーセンサゲルを構築し、その特性の評価を実施する。分担者・野村は、分子ロボットの外部操作に加えて、培養細胞をターゲットとする人工設計した分子間相互作用を用いることで特異的な疑似(モデル)食作用の実現を目指す。具体的には、抗原-抗体反応を模倣した核酸アプタマによる標的認識系を実現する予定である。分担者・佐藤は、カプセル型DNAゲルの形成制御の詳細を検討しつつ、生体との親和性の検討に着手する予定である。分担者・伊野は、引き続き、DNAゲル計測に向けた電気化学システムを開発する。
|