研究課題/領域番号 |
20H00626
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
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研究分担者 |
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (60332475)
菅沼 悠介 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70431898)
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90335919)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 南極氷床 / 鮮新世 / 中新世 |
研究実績の概要 |
南極氷床が温暖化に対して敏感であることが明らかになり、温暖化の進行による海面上昇に対する危機感が高まっている。最新のIPCC特別報告書では将来の海面上昇予測が大幅に上方修正され、最も温暖化が進行するシナリオによれば300年後に海面が数メートル上昇するという。この上方修正は南極氷床融解量の見積もりの変更によるものであり、現在「温暖化が進行した場合にどの段階でどのような速度で南極氷床融解が進行しうるのか?」が海面上昇予測における核心的な問いになっている。氷床の応答時間は長く、その特性の本質的な理解にはより温暖な気候状態における長期間の氷床変動を調べる必要があり、今後の予測に関しては不確かさが非常に大きい。本研究では、国際深海科学掘削計画(IODP)において西南極ロス海で昨年掘削された最新の海底堆積物コアを用い、現在より全球平均気温が+1℃から+5℃(海面が+5から+40mまで上昇)温暖であった時代における南極氷床の融解過程を100年スケールの解像度で復元し、+5℃まで温暖化が進行する過程における南極氷床融解の特性を明らかにする。 中期鮮新世温暖期(約330-300万年前)および中期中新世気候最適期(約1600万年前前後の数万年間)を対象とする。最新の地球化学的手法を駆使し、海水温や南極氷床の変動の復元および氷床の融解地域の特定を行い、氷床の大規模かつ不可逆的な融解イベントが起こっていたのかどうか、もし起こっていたとしたらどの地域でどのように進行するのか、またそれを導く要因の解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中期鮮新世温暖期の南極の環境変動復元に関しては、330-330万年前の期間を約390年の時間解像度で堆積物中のテトラエーテル脂質と低分子脂肪酸の水素同位体比の分析を行い、過去の海水温と海水の水素同位体比の変動の復元を行った。堆積物中にはテトラエーテル脂質と低分子脂肪酸が連続的に十分量含まれていたため、連続的な記録を得ることができた。得られた時系列記録の予察的な解析から、数万年および千年スケールの周期の変動が確認された。 中期中新世気候最適期の南極の環境変動復元に関しては、1650-1620万年前の期間を約150年の時間解像度で堆積物中のテトラエーテル脂質と低分子脂肪酸の水素同位体比の分析を行い、過去の海水温と海水の水素同位体比の変動の復元を行った。こちらに関しても堆積物中に目的物質が連続的に十分量含まれており、連続的な記録を得ることができた。その結果、鮮新世より温暖な気候であったと考えられている中期中新世気候最適期では、水温、脂肪酸の水素同位体比共に、鮮新世よりも短周期かつ大きな変動の繰り返しが認められた。
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今後の研究の推進方策 |
中期鮮新世温暖期の南極の環境変動復元に関しては、今後はさらに時間解像度を上げた分析を実施し、得られた千年スケールの気候変動の存在をさらに検証する。中期中新世気候最適期の南極の環境変動復元に関しては、より温暖な期間の環境変動を復元し、さらに温暖な気候状態における短周期の気候変動の特徴を調べていく予定である。
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