研究実績の概要 |
多摩川および隅田川の河川水とそこに放流している下水処理場の処理放流水の採取を行い、その中のBPA、ビスフェノール代替化合物(BPF, BPS, BPZ,BPAP, BPE, BPAF, BPB), ノニルフェノール、オクチルフェノール、トリクロサン、チモール、oxybenzone (BP-3),UVP等のフェノール系内分泌攪乱物質を、昨年度開発した直接誘導体化法を用いて、一斉分析した。多摩上流部で廃棄物埋立処分場の浸出水が放流されている下水処理水とその受水河川水ではBPAおよびノニルフェノールが他の下水処理場に比べて高濃度であり、廃棄物埋立処分場に西暦2000年までに埋立られたプラスチック製品に由来する負荷が示唆された。古い製品由来の浸出水の寄与は、ビスフェノールAが卓越するビスフェノール化合物の組成からも支持された。分析結果はまとめて、Environmental Monitoring and Contaminants Research誌に投稿し、受理、公開された。 レポーター遺伝子アッセイ法を用いて、都内下水処理場(3か所)の放流水とその放流先である河川水中のエストロゲン活性を測定した。同じ試水について、直接誘導体化法を用いたGC-MS分析および高速液体クロマトグラフ質量分析により、エストロゲン活性を持つ成分の測定を行った。多摩川中流の都市域を流域とする下水処理場の放流水では、アッセイ法によるエストロゲン活性の99%以上が女性ホルモン類によるものと計算され、従来の知見が確認された。一方、上述の流域に廃棄物埋立処分場のある下水処理場の放流水では、女性ホルモン類の寄与は85%程度まで下がり、ノニルフェノールとビスフェノールAの寄与が4%から10%程度まで大きくなった。廃棄物埋立処分場に埋め立てられたプラスチックからの負荷を示すユニークな知見が得られた。
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