研究課題
人獣臨床や農場由来の薬剤耐性遺伝子(ARGs)は、下水処理を経ても残留し、河川や沿岸の水環境に長期間存在する。また、自然環境起源のARGsも知られてきており、これら多様なARGsが人間環境へ侵入するリスクがある。本研究では、病原細菌種間だけでなく、自然水圏細菌と人獣病原細菌間のARGs水平伝播(HGT)のリスク評価を目的としている。主な成果は次のようにまとめられる。1)海洋細菌からヒト腸内細菌へのARGの接合伝達は我々が解明してきたが、本研究ではテトラサイクリンやサルファ剤耐性の古典的なARGsと、マクロライド系の新規遺伝子の研究から、ARGsは経時的に特定の伝達因子に収束することが示唆された。また、水圏細菌で新たなARGsと伝達因子を発見した。2)海洋細菌から大腸菌へのHGTは、低濃度有機物下では起こりにくいが、有機物添加で直ちに伝達能が復活した。これは下水処理水の排出口、養殖場などの有機物濃度の比較的高い水環境では環境菌と人獣菌の共存でHGTが起こることを示唆した。また、特定の金属や低濃度消毒剤でもHGTが促進されることから、自然水圏では特定条件下でのARGsの拡散が示唆された。3)水環境由来のAcinetobacterでは臨床株と共通するARGsが見出され、環境と臨床間での遺伝子交流があることが示唆された。4)細菌は水環境では原生生物に捕食されるが、捕食後にHGT促進が起こる場合がある。また、魚類の水揚げ後、市場からハエによってARGが人間環境(とくに食品)へ運搬されうることがわかった。畜産ではこの現象は知られていたが、魚や環境水でもハエがベクターになりうることがわかった。5)細菌間のHGTが液相とバイオフィルムでは異なるため、これらを勘案してARGsのリスク評価を行うモデルを考案した。以上の結果は、水環境でのARGs動態と人へのリスクに関して多くの成果を与えた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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