研究課題/領域番号 |
20H00634
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90403857)
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研究分担者 |
高橋 真 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (30370266)
川嶋 文人 愛媛大学, 農学研究科, 寄付講座教授 (60346690)
有薗 幸司 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 特任教授 (70128148)
加藤 恵介 東邦大学, 薬学部, 教授 (80276609)
日下部 太一 東邦大学, 薬学部, 講師 (00600032)
冨永 伸明 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (30227631)
平野 将司 熊本高等専門学校, 拠点化プロジェクト系先端研究コアグループ, 准教授 (20554471)
久保田 彰 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (60432811)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機フッ素化合物 / 残留性有機汚染物質 / 環境汚染 / 毒性影響 / 核内受容体 |
研究実績の概要 |
研究実績の概要は以下の通りである。 1)PFOS・PFOAおよび次世代型有機フッ素化合物(PFASs)を含む34物質を対象として、トリプル四重極LC-MSシステムによる一斉分析法を開発した。分離カラム・イオン化条件等の最適化を検討した結果、PFASsをpgレベルで測定することが可能となった。また、底質試料を対象とした既存の分析法を改良し、34物質のPFASsを効率的に抽出・精製するための底質試料の前処理法を検討した。 2)ヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)に対する次世代型PFASs(約7000種類)の結合親和性をインシリコドッキングシミュレーション解析で予測した。その結果、4000種類以上の次世代型PFASsはPFOS・PFOAなど既知PFASよりも、またそのうち約150種類は典型的PPARαリガンドGW0742よりも強い結合親和性を示した。 3)急性毒性を示さない濃度のPFOS・PFOAをヒメダカ受精卵に曝露後、ふ化仔魚のRNA-Seqを行った。その結果、両PFASsで共通して発現が上昇(32個)および減少(76個)した遺伝子が見出された。また、そのうちいくつかの遺伝子は曝露10日目の胚でも同様に発現変動が見られた。 4)ゼブラフィッシュ胚を用いてPFOSおよびPFHxSの発生毒性を評価した。PFOSでは10 μMで心臓周囲や卵黄嚢の浮腫、血流の低下など循環障害が有意に認められ、その重篤度は濃度依存的に増加した。PFHxSでは100 μM以上でPFOSと同様の循環障害が認められたものの、その重篤度はPFOSと比べて低かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PFOS・PFOAおよび次世代型有機フッ素化合物(PFASs)含む34物質を対象として、トリプル四重極LC-MSシステムによる一斉分析法を開発した。分離カラム・イオン化条件等の最適化を検討した結果、PFASsをpgレベルで測定することが可能となった。また、底質試料を対象とした既存の分析法を改良し、PFASs 34物質を効率的に抽出・精製するための底質試料の前処理法を検討した。 約7000種類の次世代PFASsの化合物ライブラリーを作製し、それらのヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARα)に対する結合親和性をインシリコドッキングシュミレーション解析で予測した。次世代PFASsの約7000種類のうち、4000種類以上は既知PFOS・PFOAよりも、またそのうち約150種類は典型的PPARαリガンドGW0742よりも強い結合親和性を示した。 急性毒性を示さない濃度のPFOS・PFOAをヒメダカ受精卵に曝露後、ふ化仔魚のRNA-Seqを行った。その結果、両PFASsで共通して発現が上昇(32個)および減少(76個)した遺伝子が見出された。また、そのうちいくつかの遺伝子は曝露10日目の胚でも同様に発現変動が見られた。 ゼブラフィッシュ胚を用いてPFOSおよびPFHxSの発生毒性を評価した。受精後5時間の胚にPFOSおよびPFHxSを水性曝露し受精後96時間で稚魚を観察したところ、PFOSでは10 μMで心臓周囲や卵黄嚢の浮腫、血流の低下など循環障害が有意に認められ、その重篤度は濃度依存的に増加した。PFHxSでは100 μM以上でPFOSと同様の循環障害が認められたものの、その重篤度はPFOSと比べて低かった。以上より、試験したPFASsの発生毒性の主要な表現型は循環障害であること、ならびにPFASsの毒性は骨格炭素数の大きな化合物ほど強いと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立したPFASsの一斉・微量分析法を、海洋・湖沼の底質コア試料に適用し、底質中PFASsの鉛直分布と地域差を明らかにする。とくに、既存研究で堆積年代が特定されている底質コア試料を活用し、PFASsの環境負荷に関する時系列変化や環境動態の解析を行う。また、燃焼イオンクロマトグラフィーを用いたフッ素測定システムの最適化を行って、底質試料中の抽出可能態フッ素(EOF)を測定する分析法を確立する。 ヒトPPARαに対するPFASsの結合親和性に寄与する要因を明らかにするため、初年度のインシリコドッキングシュミレーションに結果を用いてQSAR解析を行う。また、初年度の結果の妥当性を検証するため、ヒトPPARα組換タンパク質を用いてPFASsとの競合結合試験を実施・比較する。 魚類におけるPFASsによる循環障害の分子メカニズムを明らかにするため、曝露胚を用いたRNA-Seq解析やリアルタイムPCR解析を実施し、DEGsの特定を行う。さらに、循環障害への関与が示唆される遺伝子を抽出し、その阻害薬・拮抗薬などとPFASsの供曝露試験を実施することで、PFASs誘発性の循環障害に対する役割を検証する。
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