研究課題/領域番号 |
20H00636
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
奥田 知明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30348809)
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研究分担者 |
梶野 瑞王 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (00447939)
深潟 康二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80361517)
岩田 歩 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (30827340)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エアロゾル / 帯電粒子 / 沈着 / 呼吸器 / 地表面 / フィールド調査 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
室内実験としては、微分型電気移動度分級器(DMA)と凝縮粒子カウンター(CPC)を用いて、導入粒子の帯電状態とその沈着現象との関係を調べた。15×45×25 cmのチャンバーに粒子を導入し、Am-241中和器通過の有無を切り替えることで粒子群の帯電状態を変化させ、下流側でDMAおよびCPCを用いて粒子数を計測した。その結果、粒径約100 nm以下の粒子では帯電よりも拡散が、それ以上の粒子では拡散よりも帯電が、それぞれ沈着現象に対して支配的であることが示された(奥田・岩田)。 シミュレーションとしては、まず直接数値シミュレーションとラグランジュ粒子追跡法を用いて、微小粒子を含む三次元非定常流の流動解析コードを開発し、その検証問題としてチャネル乱流における壁面への粒子の沈着挙動を調査した。これにより粒子の分布や沈着速度を求められることを確認し、チャネル乱流場での微小粒子の運動について、粒子径が沈着現象に大きな影響を与えることを確認した。一様電場下において、超微小粒子を捕集する場合は弱い電場でも捕集可能であり、1μm程度の粒子径の粒子を捕集するには強い電場が必要であることを確認した。また、乱流場での微小粒子の運動において、鏡像力の影響がほとんどないことを確認した(深潟)。 さらに、福島原発事故由来の放射性粗大粒子(CsMP)の物理的性状を考慮した拡散沈着現象の数値シミュレーションを世界で初めて実施した。しかし、CsMPの沈着量は大幅に過小評価した。CsMPは放射性壊変により自己帯電すると考えられるが、計算では電気的中性を仮定したため、自己帯電による乾性・湿性沈着率の増幅効果を無視したことも原因と考えられる。そこで、その効果を数値モデルに組み込むために、先行論文の実験設定を模すためのランジェヴァン方程式モデルを構築し、電気的中性条件で正常動作することを確認した(梶野)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大による様々な影響があったが、本研究の推進についてはプロジェクトの初年度にあたり、主に室内実験とシミュレーションモデルの基礎部分の構築を主に進めたため、大きな影響は受けなかった。室内実験の推進の際に、実験室への入構制限や機器の調達に若干の遅れはあったものの、実験の効率化などによってカバーできた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、帯電粒子の沈着現象について、室内実験とシミュレーションモデルの双方よりアプローチを進める。具体的には、数十cmスケールの領域における帯電粒子の沈着現象の実験およびシミュレーション(奥田・深潟)、および領域気象化学モデルNHM-Chemへの粒子帯電パラメータの導入(奥田・梶野)を進める。2021年度も新型コロナウイルス感染症の社会的な影響は引き続き大きいと見込まれるが、本研究においては数十cmスケールの比較的小規模な現象についての実験および解析から進めるため、実験室への入構制限や機器の調達の遅れ等は予想されるものの、前年度までの経験を踏まえて効率的な研究の推進に努める。
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