研究課題
フィールド観測としては、当研究室にて開発された、粒子の帯電状態に応じて連続的に粒子を分離できる装置(K-MACS: Keio-Measurement System of Aerosol Charging State)を、都市部の横浜(慶應義塾大学矢上キャンパス26棟501室)と農村部の能登(金沢大学 Noto Ground-based Research Observatory)に設置した。2022年6月から12月にかけての半年間、15分ごとの帯電分布データを取得した。重回帰分析の結果、両サイトで非帯電粒子割合に最も関連する気象変数は容積絶対湿度であった。(奥田)室内実験では、個別粒子の帯電状態分析法としてKPFM (Kelvin Probe Force Microscopy) を用いて、塩化セシウムの表面電位の測定値から、個別粒子の荷電数を推定できることを示した。(奥田)モデル構築としては、領域気象化学モデルNHM-Chemに雷による降水粒子の帯電効果を実装し、富士山頂におけるLightning NOyの再現実験を行った(論文投稿中)。また宇宙線と天然放射線核種による大気イオンの生成とエアロゾル帯電効果、降水粒子とエアロゾルの帯電効果を考慮したbelow-cloud scavenging過程の定式化を行った(梶野)。小規模スケールの粒子沈着現象の実測とシミュレーションとしては、前年度に引き続き、直接数値シミュレーションとラグランジュ粒子追跡法に基づく微小粒子を含む三次元非定常流の流動解析コードを用いて、矩形容器および気道模型内の微小粒子の流動解析を行い、壁面への粒子の沈着挙動を調査した。その結果、中心付近から流入した粒子は分岐部および分岐後の側面に多く沈着し、壁面付近から流入した初期速度の遅い粒子は分岐後も流れに追従することを示した。(深潟)
2: おおむね順調に進展している
2022年度も前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症による若干の影響はあったが、フィールド調査も予定通り開始できたほか、室内実験とシミュレーションモデルの構築も含めて、大幅な進捗の遅れはなかった。フィールド観測、室内実験、シミュレーションモデル構築、いずれも順調に進展していると判断した。
前年度に引き続き、帯電粒子の沈着現象について、フィールド観測および室内実験と、シミュレーションモデルの双方よりアプローチを進める。具体的には、フィールド観測により得られた大気イオンとエアロゾル帯電状態によりNHM-Chemの予測結果を検証し、またその成因のモデル解析を実施する。そして、降水粒子とエアロゾルの帯電状態を考慮することにより、先行研究における福島原発事故由来の放射性粒子の沈着量の著しい過小評価(Kajino et al., 2019; 2021)が改善されるかどうかを検証する(奥田・梶野)。さらに、気道内部での帯電粒子挙動に関する室内実験とシミュレーションを進め、両者を照合する(奥田・深潟)。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Atmospheric Environment: X
巻: 16 ページ: 100191~100191
10.1016/j.aeaoa.2022.100191
https://www.applc.keio.ac.jp/~okuda/research/theme/charge.html