研究課題
北極の5地点で、他グループにより他の手法で測定されてきたBCの値をCOSMOSの値と比較し、測定精度を評価し、それらをCOSMOSの値で規格化した。また長期観測を容易にするために、故障が起きやすいCOSMOSの可動部を改良した。大気中の酸化鉄FeOxの分布を推定する最初のステップとして北極大気中のFeOxの数濃度とBC数濃度との関係を定量化した。ニーオルスンにおいける降水の採集を継続した。降水中のBC濃度の測定は、BCを水中から大気中に浮遊させた後にSP2で検出するという独自に開発した方法を用いた。この測定と降水量の気象観測から、沈着フラックスを推定し、BCの降水除去の動態を明らかにした。冬季は人為起源BC、夏季は森林火災起源BCに注目した解析を行った。ニーオルスンとバローにおけるライダー観測による雲底・雲頂データを用いて、降水を起こす雲層の高度を推定した。雲成長・降水によるエアロゾル除去過程を、このデータやラジオゾンデの気温・水蒸気データと組みあわせた解析を行った。またSP2を用いて、降水中のFeOxを測定した。ニーオルスンにおいて採集した降雪・降水試料中の硫酸塩濃度をイオンクロマトグラフィー法により測定した。ノルウェー大気環境研究所(NILU)と共同で、NILUが行っている大気中の硫酸塩濃度も用いて、硫酸塩の降水除去過程の季節変化を解明した。また気象データを組みあわせてBCと同様に硫酸塩の沈着フラックスを推定した。これまで開発してきた全球エアロゾルモデルを用いて北極大気中および降水中のBCの観測によってモデルを評価・検証した。また、北極におけるBCの発生源寄与(東アジア・ロシアの人為発生源、シベリアのバイオマス燃焼など)の季節変動を調べた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究計画はほぼ全て実施できた。主要な項目は、北極の5地点でのCOSMOSによるBCの連続観測と、他グループにより他の手法で測定されてきたBC測定との比較である。ニーオルスンでの降水の定期的な採集とBC, FeOx, イオン成分の分析も予定通り進んでいる。これらの観測は、北極における主要な光吸収性エアロゾルであるブラックカーボン(BC)・酸化鉄(FeOx)と非海塩性硫酸塩エアロゾルの放射強制力を高精度で推定するために必要な観測である。また、これまで開発してきた全球エアロゾルモデルを用いて北極大気中および降水中のBCの観測との比較を行うことができた。これは、エアロゾルの気候影響を定量化するための重要なステップであった。この成功により、本研究は大きく進展した。
降水中の酸化鉄(FeOx)の分析は世界的には全く行われていない。そのためその分析法の精度はほとんど確立していない。レーザー誘起白熱法で測定するのであるが、BCとの分離、水からの抽出効率、長期保存した場合の粒径分布の安定性といった点について、実験的・理論的に調べる必要がある。この研究を優先的に行う。この評価を行った後に、降水中の酸化鉄濃度の時間的、空間的な変化を解析する。また大気中のBC観測に用いているCOSMOSの改良も行う。故障頻度が多いこれまでのヒーターに代わり、シーズヒーターを用いた新たな加熱インレットを製作し、観測現場での試験を行う。これはBCの長期高精度観測を行うために重要なステップである。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 8件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 8件) 備考 (2件)
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