研究課題
2023年度は、5月に現地訪問し2022年度に設置した永久凍土融解実験の昇温区のヒーターの電源を入れて昇温実験を開始した。この実験ではコントロール区との深度30cmの地温の差が2-3℃になるように温度上昇を行うことを目的としていたが、ヒーター加熱開始から約2ヶ月後の7月には、コントロール区との比較で約2.5℃の温度上昇が達成された。その後も、8月までは約2.5℃高い温度が維持されたが9月に入り温度が低下する様子がみられた。ヒーターの安定した温度制御については、今後の課題となった。この昇温実験中に観測した自動開閉チャンバーによる土壌呼吸観測値の季節変化を解析したところ、温度上昇に伴って土壌呼吸が単調に上昇するわけではなく、初夏(6月頃)に減少した後、7月以降に増加するという、指数関数モデル(Q10モデル)から外れる振る舞いが観測された。これは春から夏にかけての活動層の逐次的な融解や、先行して融解した土壌表層の乾燥化が影響しているものと示唆された。また、長期的な温暖化の影響を検討するために、2011年から2022年までの渦相関CO2フラックスの解析を進めた。この結果、観測サイトでは秋、冬、春の植物非活動期間の呼吸量が近年上昇していることが明らかとなった。これは、土壌深20-40cmのところで冬でも土壌が凍結しない未凍結層が形成されつつあることや、季節的に土壌が融解する活動層が徐々に深くなっていることが影響していると考えられた。こうした影響により、近年CO2の年間収支が吸収から放出に移行していることが明らかになった。さらに広域の影響を理解するために国際共同研究に参画し、北極域全体の炭素収支の傾向(吸収・放出)の地理分布の分析に貢献した。広域解析で得られた結果は、本研究の観測サイトで得られた傾向と矛盾しなかった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Water Resources Research
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