研究課題/領域番号 |
20H00647
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
沖部 奈緒子 九州大学, 工学研究院, 准教授 (30604821)
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研究分担者 |
中野 博昭 九州大学, 工学研究院, 教授 (70325504)
菅井 裕一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70333862)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Organic leaching / Amino acid / Organic acid / Urban mine waste / Spent catalyst |
研究実績の概要 |
①石油精製La含有廃触媒からの希土類元素(REE)浸出試験:まず試薬を用いたケミカルチーチング試験において、クエン酸(>100 mM)が1 M程度の無機酸に匹敵する浸出剤であることを見出した。希土類元素の1つであるランタン(La)の当該廃触媒からの浸出挙動は、異なる有機酸によって大幅に変化した。真菌による有機酸発酵のための初期条件(植菌サイズ、基質濃度、pH等)は有機酸組成に大きく影響を与えるものであったが、不要なシュウ酸生成を制御しつつクエン酸(130 mM程度)を発酵できる条件を見出した。実際に真菌が発酵した有機酸と、その組成を人工的に試薬で再構築した有機酸ミックスでは、ほぼ同様のLa浸出効率が見られ、廃触媒5%のパルプ濃度において、約74%のLaを浸出することに成功した。 ②石油精製Mo/Co含有廃触媒からのレアメタル浸出試験:モリブデン(Mo)は主にアルカリ浸出効果(アミノ酸は自然緩衝効果によりアルカリ度の制御に有用)により廃触媒から浸出し、Mo-アラニン錯体の寄与は小さいことが示唆された。コバルト(Co)はアルカリpHにてアラニン溶液に浸出した後、ピンク色の非晶質Co-アラニン錯体として急速に沈殿した。また、アルカリ条件にて不要なAlの溶解を効果的に抑制できた。これらの利点により、アルカリアラニンは他の酸性浸出剤と比較し有効性が示唆された。Moの浸出率を今後いかに向上するかが課題である。 ③Moバイオナノ粒子の生成:試薬を用いた試験では、先行研究にてパラジウム(Pd)やプラチナ(Pt)バイオナノ粒子の生成に成功している超好酸性金属還元細菌Acidocella aromatica PFBC株を用いることでMoナノ粒子の生成が認められた。Moは6価の溶液から、5価と6価が混在した青い酸化物として粒子を生成していることが分かった。今後詳細な固体分析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①石油精製La含有廃触媒からの希土類元素(REE)浸出試験:まず試薬を用いたケミカルチーチング試験において、クエン酸が有効であること、更に、真菌の培養条件を最適化することにより不要なシュウ酸生成を制御しつつクエン酸(130 mM程度)を発酵できる条件を見出した。この発酵有機酸ミックスが、試薬クエン酸に匹敵する浸出剤として機能することを見出した。廃触媒5%のパルプ濃度において、約74%のLaを浸出することに成功した。==>当初の予定通りに終了 ②石油精製Mo/Co含有廃触媒からのレアメタル浸出試験:アルカリアラニン溶液を浸出剤として用いた結果、モリブデン(Mo)は主にアルカリ浸出効果により廃触媒から浸出し、Mo-アラニン錯体の寄与は小さいことが示唆された。コバルト(Co)はアルカリpHにてアラニン溶液に浸出した後、ピンク色の非晶質Co-アラニン錯体として急速に沈殿した。また、アルカリ条件にて不要なAlの溶解を効果的に抑制できた。==>これらより、まず、各金属が選択回収できる可能性が示され、当初の予定に達している。今後は、Moの浸出効率を向上させることが重要であり、条件検討を進めていく。 ③Moバイオナノ粒子の生成:試薬を用いた試験では、先行研究にてパラジウム(Pd)やプラチナ(Pt)バイオナノ粒子の生成に成功している超好酸性金属還元細菌Acidocella aromatica PFBC株を用いることでMoナノ粒子の生成が認められた。Moは6価の溶液から、5価と6価が混在した青い酸化物として粒子を生成していることが分かった。==>ここまでで、まずMoバイオナノ粒子生成の手がかりをつかみ、今後の詳細な固体分析に繋げることができる。当初の予定を概ね達成している。
以上より、おおよそ順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
・Mo/Co 廃触媒のorganic leaching試験について Moの浸出率を上げるための繰り返しリーチング試験や、アミノ酸溶液のリサイクル試験などの検討が必要。 ・新たな廃触媒試験 新年度より新たに対象とする他種の廃触媒としてPt廃触媒およびLa/Ni廃触媒が存在する。これらの新たな対象物についても、キャラクタリゼーションから開始し、適宜、リーチング試験を進める。 ・Moバイオナノ粒子生成試験について 昨年度に生成を確かめたナノ粒子に対して、再現性の確認を行った上で、各種固体分析をし、Active cellとheat-kill cellの違いや、粒子径、粒子密度などの各種データを収集する予定。これに加え、実浸出液を用いた際のバイオナノ粒子生成試験も立ち上げたい。
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