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2020 年度 実績報告書

炭素制約と市場化の下での電力システム─その定量的評価と政策研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H00649
研究機関龍谷大学

研究代表者

大島 堅一  龍谷大学, 政策学部, 教授 (00295437)

研究分担者 木村 啓二  公益財団法人自然エネルギー財団, 事業局, 研究員(移行) (00560583)
歌川 学  国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40356572)
山下 英俊  一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50323449)
林 大祐  立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (50732848)
竹濱 朝美  立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
安田 陽  京都大学, 経済学研究科, 特任教授 (70268316)
高村 ゆかり  東京大学, 未来ビジョン研究センター, 教授 (70303518)
高橋 洋  都留文科大学, 教養学部, 教授 (80456201)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード再生可能エネルギー / 地域分散型エネルギー
研究実績の概要

1)政策分析班では、欧州において、公正な市場環境が整備された上で再エネの市場統合が進められたこと、余剰再エネ電力を有効活用するための、消費部門のセクターカップリングが本格化しつつあることを確認した。加えて、FiPに関する欧州制度の実績に関する文献レビューを行し、FiPがインバランスの低減に寄与すること、第二に、変動性への対応はほとんどみられないこと、第三にリスク上昇に伴う金利上昇が発電コストを悪化させることを把握した。
2)市場設計分析班では、電力市場についてモデルを用いて定量評価を行っている国内外の先行研究をレビューし、本研究における分析手法として市場参加者を個別にモデル内で表現するエージェントベースモデルを採用することを決定した。既存のエージェントベースモデルでは利益最大化が各主体の行動原理とされることが一般的であり、本研究で構築するモデルでも同様の原理を採用することとした。
3)地域経済分析班では、福島県を対象とした2011年版拡張産業連関表を作成した。また、2012-2020年度における福島県の再生可能エネルギー発電事業の約2割が、県内に本社を置く事業者によって実施されたことを明らかにした。再生可能エネルギー先駆けの地を目指す福島県においても、地域主導の再生可能エネルギー発電事業は限定的であることが分かった。
4)電力需給・系統解析班では、TIMESを用いたエネルギー技術モデルにより日本全国の送電線および発電所を模擬し、社会コストが最小化される2050年までの最適電源構成を予測した。また、2030年に、原子力発電停止と再エネ電力比率45%を目標に、風力発電70GW、太陽光発電107GWを導入する場合について、地域間連系線拡張と炭素税によるCO2削減の効果を検証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)政策分析班、2)市場設計分析班、3)地域経済分析班、4)電力需給・系統解析班いずれもが設定した課題について研究を進め、成果を上げていることから、「おおむね順調に進展している」とした。

今後の研究の推進方策

1)政策分析班では、欧州のセクターカップリング等の研究を引き続き進めるとともに、これらシステム改革の日本での展開を検証する。また、FiPに関しては欧州においても実証的な研究が少ないことから、FiPの制度目的を分析するための有効なツールについて考察を進める。
2)市場設計分析班では、エージェントベースモデルを用いた電力市場に関する先行研究において、卸電力市場の制度設計にのみ焦点を当てたものが主で、需給調整市場と卸電力市場の組み合わせのように、異なる市場を同時に扱うモデルは少ないことが判明した。今後は、異なる市場を組み合わせ、制度の差異や市場参加者の行動の差異などによって取引結果にどのような差異が生じるかを分析できるモデルを構築していく。
3)地域経済分析班では、福島県の脱炭素化による地域経済効果を定量評価するために、再生可能エネルギーと省エネルギー技術を中心としたボトムアップシナリオを作成し、2011年版拡張産業連関表を利用して産業連関分析を試みる。また、再生可能エネルギー発電事業の所有構造を、東北地方に対象を拡げて分析する。
4)電力需給・系統解析班では、電力市場設計・運用の評価に関し日本に焦点を当てて研究を進める。加えて、電力需給・系統解析に関しては、地域間連系線の拡張規模、蓄電池の導入規模、炭素税導入による電力コストへの影響について、西日本、東日本の特性を分析する。IEA Net Zero排出シナリオを参照して、再エネ電力比率45%および60%の達成可能性を考察する。電気自動車(EV)充電と揚水発電の揚水運転、ヒートポンプ加温稼働の時間プログラムの最適な時間プログラム、デマンドレスポンス活用による蓄電地導入規模の節約効果を考察する。

  • 研究成果

    (43件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (22件) (うちオープンアクセス 6件、 査読あり 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] カーボンバジェットを考慮した地域のエネルギーシナリオ2021

    • 著者名/発表者名
      歌川学
    • 雑誌名

      太陽エネルギー

      巻: 47-2 ページ: 52~58

  • [雑誌論文] 変動性再生可能電源による2030年の電力需給,地域間連系線増強と炭素税の効果検証2021

    • 著者名/発表者名
      竹濱朝美, 歌川学
    • 雑誌名

      第37回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集,(エネルギー資源学会)

      巻: 37 ページ: 157~162

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本の再生可能エネルギー政策と森林環境2021

    • 著者名/発表者名
      高橋洋
    • 雑誌名

      森林環境

      巻: 2021 ページ: 24~27

  • [雑誌論文] 原子力発電の衰退と後始末2021

    • 著者名/発表者名
      大島堅一
    • 雑誌名

      日本原子力学会誌ATOMOΣ

      巻: 63(2) ページ: 100~101

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 原子力発電が残した負の遺産処理に向けて2021

    • 著者名/発表者名
      大島堅一
    • 雑誌名

      科学

      巻: 50(3) ページ: 42~44

  • [雑誌論文] 不透明化する除染費用とその負担2021

    • 著者名/発表者名
      大島堅一
    • 雑誌名

      科学

      巻: 91(3) ページ: 289~295

  • [雑誌論文] 新型コロナウィルス対応のための情報収集と意思決定 -リスクマネジメントの観点から2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 雑誌名

      標準化と品質管理

      巻: 73 ページ: 11~16

  • [雑誌論文] 風力発電が社会にもたらす便益2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 雑誌名

      エネルギー

      巻: 44 ページ: 32~35

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] OECD 諸国はどのように石炭を削減し再生可能エネルギーを導入してきたか? _ 石炭=再エネ指標の提案と分析 _,2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 雑誌名

      京都大学大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座ディスカッションペーパー

      巻: 15 ページ: 1~36

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 災害多発時代の電力システムとリスクマネジメント2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 雑誌名

      科学

      巻: 90 ページ: 257~262

  • [雑誌論文] 脱炭素の国際動向 ~国際エネルギー機関報告書 “Net Zero by 2050” で何が書かれているか?~2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 雑誌名

      化学装置

      巻: 64 ページ: 17~29

  • [雑誌論文] 地域に根ざした再生可能エネルギー事業による環境保全の可能性2020

    • 著者名/発表者名
      山下英俊
    • 雑誌名

      環境技術

      巻: 49(3) ページ: 17~21

    • DOI

      10.5956/jriet.49.133

  • [雑誌論文] 世界の風力発電の発電コストと経済性2020

    • 著者名/発表者名
      木村啓二
    • 雑誌名

      風力エネルギー

      巻: 44.1 ページ: 3~6

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 東日本地域における風力大量導入による2030年の電力需給,地域間連系線と炭素税の効果検証2020

    • 著者名/発表者名
      竹濱朝美,歌川学,斎藤哲夫
    • 雑誌名

      第42回風力エネルギー利用シンポジウム,(日本風力エネルギー学会)

      巻: 42 ページ: 212~215

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 関西圏におけるCO2排出90%削減・エネルギー自給シナリオの検討2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学,堀尾正靱
    • 雑誌名

      龍谷政策学論集

      巻: 10月2日 ページ: 99~129

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 地域産業活性化に寄与する飯田市域のCO2排出ゼロシナリオの展開2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学, 堀尾正靱
    • 雑誌名

      機関誌学輪

      巻: 7 ページ: 37~52

    • 査読あり
  • [雑誌論文] IPCC1.5℃特別報告書と,産業革命前比気温上昇1.5℃未満抑制のための日本のCO2排出削減2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学
    • 雑誌名

      日本の科学者

      巻: Sep-55 ページ: 28~33

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 先進国の CO2 排出量の推移と要因,オーストリアの CO2 排出2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学
    • 雑誌名

      人間と環境

      巻: Feb-46 ページ: 54~61

  • [雑誌論文] 地域の省エネ・エネルギーシフトを支援する人材、専門的知見を地域で活かすシステム2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学
    • 雑誌名

      事業構想

      巻: 2020年6月号 ページ: 94~95

  • [雑誌論文] 2030年は人類の分岐点になるのか2020

    • 著者名/発表者名
      高村ゆかり
    • 雑誌名

      季刊社会運動

      巻: 439 ページ: 36~47

  • [雑誌論文] 環境条約の国内実施ー国際法の観点から2020

    • 著者名/発表者名
      高村ゆかり
    • 雑誌名

      環境法政策学会誌

      巻: 23 ページ: 7~24

  • [雑誌論文] 日本の再生可能エネルギーの未来2020

    • 著者名/発表者名
      高村ゆかり
    • 雑誌名

      生活協同組合研究

      巻: 231 ページ: 15~23

  • [学会発表] 変動性再生可能電源による2030年の電力需給,地域間連系線増強と炭素税の効果検証2021

    • 著者名/発表者名
      竹濱朝美,歌川学
    • 学会等名
      第37回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス,(エネルギー資源学会)
  • [学会発表] The Impacts of EV Charging Pattern Optimisation to Realise Renewable Energy-Based System2020

    • 著者名/発表者名
      Yoh Yasuda, Hiroshi Hamasaki
    • 学会等名
      4th E-Mobility Power System Integration Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] Recovery Plan for Resilient and De-carbonised Society with/after Covid-19 _ Analysis on Future Demand and E-mobility in Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Hamasaki, Yoh Yasuda
    • 学会等名
      19th Wind Integration Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] イベリア半島における再生可能エネルギー普及に向けた系統柔軟性向上の方策と需給調整市場の状況2020

    • 著者名/発表者名
      中島光博, 高木寛人, 中筋素生, 井伊亮太, 柳川立樹, 安田陽
    • 学会等名
      第39回エネルギー・資源学会研究発表会
  • [学会発表] TIMES-JMRT Gridを用いた2050年二酸化炭素排出量80%削減目標に向けた電源構成と系統増強計画の最適化分析2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽, 濱崎博
    • 学会等名
      令和2年電気学会電力・エネルギー部門大会
  • [学会発表] 2050年二酸化炭素排出量80%削減目標を達成するための電源構成と系統増強計画 ~TIMESを用いた最適化~2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽, 濱崎博
    • 学会等名
      電気学会 高電圧/エネルギー・環境合同研究会
  • [学会発表] TIMESを用いた2050年二酸化炭素排出量80%削減目標達成に向けたEV活用効果分析2020

    • 著者名/発表者名
      濱崎博, 安田陽
    • 学会等名
      電気学会 高電圧/エネルギー・環境合同研究会
  • [学会発表] TIMESを用いた2050年二酸化炭素排出量80%削減目標に向けた系統増強コスト分析2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽, 濱崎博
    • 学会等名
      第42回風力エネルギー利用シンポジウム
  • [学会発表] 東日本地域における風力大量導入による2030年の電力需給,地域間連系線と炭素税の効果検証2020

    • 著者名/発表者名
      竹濱朝美,歌川学,斎藤哲夫
    • 学会等名
      第42回風力エネルギー利用シンポジウム,(日本風力エネルギー学会)
  • [学会発表] グリーン・リカバリーに対応した東京都の再生可能エネルギー100%シナリオの検討2020

    • 著者名/発表者名
      松原弘直、歌川 学
    • 学会等名
      第37回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス
  • [学会発表] カーボンバジェットを考慮した地域のエネルギーシナリオ2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学
    • 学会等名
      日本太陽エネルギー学会研究発表会
  • [学会発表] 「ゼロカーボンで栄える関西」の展望と課題2020

    • 著者名/発表者名
      歌川 学、堀尾正靱
    • 学会等名
      公共政策学会関西支部大会
  • [学会発表] 気温上昇1.5℃にむけた温暖化対策による東西各地域の電力需給バランス2020

    • 著者名/発表者名
      歌川学、明日香壽川
    • 学会等名
      環境経済・政策学会
  • [学会発表] 気温上昇1.5℃未満地域カーボンバジェットを考慮したCO2排出実質ゼロにむけた地域の対策2020

    • 著者名/発表者名
      歌川 学、上園昌武、氏川恵次、近江貴治、林宰司、塩飽敏史
    • 学会等名
      日本環境学会全国大会
  • [学会発表] 脱炭素社会における公共事業の役割2020

    • 著者名/発表者名
      高村ゆかり
    • 学会等名
      公共事業学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 気候危機と国内外のエネルギー政策2020

    • 著者名/発表者名
      大島堅一
    • 学会等名
      日弁連公害対策・環境保全委員会50周年記念シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] エネルギー環境問題の現段階~人間社会への影響と政策2020

    • 著者名/発表者名
      大島堅一
    • 学会等名
      第22回日本救急看護学会学術集会
    • 招待講演
  • [図書] 世界の再生可能エネルギーと電力システム ~電力市場編2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 総ページ数
      179
    • 出版者
      インプレスR&D
    • ISBN
      978-4-844379003
  • [図書] 世界の再生可能エネルギーと電力システム ~風力発電編 第2版2020

    • 著者名/発表者名
      安田陽
    • 総ページ数
      152
    • 出版者
      インプレスR&D
    • ISBN
      978-4-844379409
  • [図書] International development and the environment : social consensus and cooperative measures for sustainability2020

    • 著者名/発表者名
      Shiro Hori, Yukari Takamura, Toshiyuki Fujita, Norichika Kanie
    • 総ページ数
      117
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-9811335938
  • [図書] 国際法の現在 変転する現代世界で法の可能性を問い直す2020

    • 著者名/発表者名
      寺村広司, 高村ゆかり他
    • 総ページ数
      448
    • 出版者
      日本評論社
    • ISBN
      978-4-535-52481-1

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公開日: 2023-12-25  

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