研究課題/領域番号 |
20H00652
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
岡部 貴美子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20353625)
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研究分担者 |
亘 悠哉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10760704)
飯島 勇人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30526702)
大澤 剛士 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (40554332)
前田 健 国立感染症研究所, 獣医科学部, 部長 (90284273)
五箇 公一 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 室長 (90300847)
坂本 佳子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (80714196)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 野生動物由来感染症 / シカ / マダニ / 生態系管理 |
研究実績の概要 |
ベースモデル作成のために、野生動物とマダニ個体数を同一箇所で調査したデータを整備した。これらのデータに基づき、ベースモデルの検討を行った。また岩手大学滝沢演習林でアカネズミ、ヒメネズミ等の共同調査を行い、マダニおよびマダニ天敵の生息調査とネズミが利用する空間スケールの予測を行った。和歌山県田辺市で野生動物の抗体陽性率、野生動物とマダニが利用する景観解析を開始し、ニホンジカ、イノシシ、アライグマの重要性を定量的に示した。アライグマのデータ解析から、SFTSウイルスが1.5km/年の速度で感染拡大していることが予測された。また特に抗体陽性率の変化が顕著で感染患者発生と関連すること、マダニ密度の上昇と正の相関が予測されたことから、セル・オートマトンの手法を用いてニホンジカのベースモデル作成に着手し、手法の妥当性を確認した。茨城県、岐阜県、和歌山県等でマダニのサンプリングを行うとともに既存のマダニサンプルを使用して、マダニ個体群の空間スケールを明らかにするために遺伝的解析に着手した。その結果、ミトコンドリアDNAのCOI領域によって種の判別が可能であることを明らかにした。また現時点のサンプルでは、全国に分布するキチマダニやヤマトマダニの解析が適当であること、普通種であるフタトゲチマダニを含め、明確な地域個体群が検出されない可能性が示唆された。また1920年代からの国内のマダニ分布情報を収集し、南方系の種のうちタカサゴチマダニなど複数種が、既に中部以北に分布している可能性を明らかにした。このことにより分布予測モデルでは気候変動を検討する必要性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はおおむね計画通りに進捗した。新型コロナウイルス感染症によって固定試験地以外のサンプリング調査は実施しなかったが、保存サンプルの分析や文献レベルの全国のマダニ分布情報の収集を行い、マダニの種ごとの分布について整理したことから、概ね計画通りに達成した。またニホンジカの重要性が明らかになったため、DNAを用いてシカの個体群スケール予測を追加する予定としたが、新型コロナウイルス感染症の影響で必要な薬品等が納品されなかった。このことからも計画以上の進捗とまではいえないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
セル・オートマトン手法の妥当性を確認できたことから、和歌山県のデータおよびマダニ情報をもとに、セル・オートマトンによる野生動物のベースモデルを作成する。野生動物の分布と移動について野外動態を調査し、マダニ密度との関係を定量化する。ベースモデルの外装を目的に、関東山地、東北地方などシカの分布拡大地のシカ個体群スケールや分布拡大情報を収集する。またマダニ個体群のスケール解明のためサンプルを収集し、分析を開始する。野生動物におけるSFTSV抗体陽性率の調査を継続し、ウイルス増幅の可能性についても検討する。また薬品等が納品され次第、ニホンジカの個体群スケール推定に着手する。
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