研究課題/領域番号 |
20H00656
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
人見 啓太朗 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60382660)
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研究分担者 |
野上 光博 東北大学, 工学研究科, 助手 (10847304)
小野寺 敏幸 東北工業大学, 工学部, 准教授 (10620916)
渡辺 賢一 九州大学, 工学研究院, 教授 (30324461)
田中 浩基 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (70391274)
石井 慶造 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 研究教授 (00134065)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 臭化タリウム / 半導体検出器 / ガンマ線 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
本研究はガンマ線ピーク効率が非常に高い臭化タリウム(TlBr)化合物半導体を用いて、高エネルギー分解能を有するガンマ線検出器を開発し、高ピーク対バックグラウンド比でホウ素が中性子と反応する際に放出される478 keVの即発ガンマ線を検出することが可能なBNCT用治療線量モニターを実現することを目的としている。 今年度はRFスパッタ法を用いた電極形成および加速器中性子源を用いた即発ガンマ線の検出に関する研究を中心に行った。 TlBr検出器の電極はこれまで真空蒸着法を用いて形成されてきた。本研究では良好な電極が形成できると期待されるRFスパッタ法を用いて検出器の電極形成を試みた。育成したTlBr結晶を切り出し表面加工を施して検出器製作に用いる基板とした。TlBr検出器の電極材料としてはTlが良好であるが、Tlスパッタリングターゲットは入手困難である。このため、スパッタリングターゲット製作方法の検討を行った。検討の結果、Tlを真空蒸着したターゲットを製作した。製作したTlターゲットを用いることによりTlBr結晶上にRFスパッタ法によりTl電極を形成する事に成功した。 また、本研究ではTlBr検出器を用いて加速器中性子源からの中性子照射による478 keV即発ガンマ線の測定を行った。青森県量子科学センターのNRTラインにおいて即発ガンマ線計測実験を行った。ホウ素入りポリエチレンをターゲットとして中性子照射を行った。この時、ホウ素が中性子と反応する際に放出される即発ガンマ線の検出をTlBr検出器を用いて行った。高エネルギーガンマ線によるバックグラウンドや511 keVのガンマ線が混在する測定環境においてTlBr検出器を用いて478 keVの即発ガンマ線を明確に検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はRFスパッタ法を用いてTlBr結晶上にTl電極を形成することに成功した。また、加速器中性子源を用いてホウ素入りポリエチレンに中性子照射を行い、高エネルギーガンマ線によるバックグラウンドや511 keVのガンマ線が混在する測定環境においてTlBr検出器を用いて478 keVの即発ガンマ線を明確に検出することに成功した。 以上に示すような成果が得られていることから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると結論できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では高ピーク対バックグラウンド比で478 keVの即発ガンマ線を検出することが可能なBNCT用治療線量モニターを実現するために、以下の研究を推進して目的達成を目指す。 ・RFスパッタ法や真空蒸着法を用いた電極形成実験を継続して行い、TlBr検出器に最適な電極形成条件や電極材料を明らかにする。 ・今年度までの成果を総合してBNCT用治療線量モニターに最適な構造、特性を有するTlBr検出器を開発する。 ・BNCT用治療線量モニターに必要な高ピーク対バックグラウンド比を実現する信号処理方法の検討を行う。 ・密封線源や中性子源を用いて開発した検出器の評価を行う。評価結果を基に検出器の特性改善を行う。 ・TlBr検出器とコリメータを用いてBNCT用治療線量モニターを構成し、特性の評価を行う。
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