研究課題
我々はこれまで、細胞内環境に応答して生体膜バリアを突破し、自己崩壊する脂質様材料(ssPalm)を開発し、mRNAや核酸送達システムとして利用してきた。 本研究では、ssPalmから形成される脂質ナノ粒子に難水溶性薬物を統合し、①薬物同士が自発的にナノ粒子を形成し、②自らの力で体内・ 細胞内動態を制御し、③細胞内環境に応答して自己崩壊することで薬物を放出する『自己ナノ組織化プロドラッグ』を開発する。2021年度においては、2020年度に開発したプロドラッグ搭載脂質ナノ粒子の核酸デリバリーシステムとしての応用可能性を検証した。核酸を細胞内に導入し、機能を発揮するためには、エンドソーム内の酸性環境に応答して正に帯電し、エンドソーム膜を不安定化することが大きな駆動力となる。様々な疎水性を有する一連のプロドラッグを搭載した脂質ナノ粒子を開発した結果、特定の薬物において、安定かつ均一性の高い脂質ナノ粒子を調製することが可能となった。プロドラッグ搭載ナノ粒子のエンドソーム膜不安定化能の指標として、pH依存的な赤血球膜の溶血活性を評価した。その結果、pHの低下に伴い、高い溶血活性が認められた。また、本技術をsiRNAの導入技術へと応用すべく、自己ナノ組織化プロドラッグにsiRNAを搭載させ、in vitroにおけるノックダウン効率を評価したところ、標的となるmRNAの発現を抑制された。このことから、本プロドラッグを搭載した脂質ナノ粒子は、核酸の送達システムとしての有用性が認められた。
2: おおむね順調に進展している
自己組織化プロドラッグを搭載したナノ粒子がsiRNAの導入技術へと応用できることを見いだしたことから、本プロドラッグが有する薬理活性とsiRNAの導入による癌治療などへと応用できる可能性を見いだした。
今後は、本プロドラッグ搭載ナノ粒子について、静脈内投与をおこなった際の抗腫瘍効果を検証すると共に、脂質組成等を変えることで遺伝子ノックダウン効率を最適化する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Pharmaceutics
巻: 13 ページ: 2097
10.3390/pharmaceutics13122097
Parmaceutics
巻: 13 ページ: 544
10.3390/pharmaceutics13040544