研究課題/領域番号 |
20H00663
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
野田 実 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (20294168)
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研究分担者 |
山門 穂高 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10378771)
澤村 正典 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60852423)
島内 寿徳 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (10335383)
寒川 雅之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70403128)
福澤 理行 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 准教授 (60293990)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 診断用チップ / プリオン様タンパク質 / パーキンソン病 / αシヌクレイン / リポソーム / 脂質膜 / 統計解析 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究で目的とする、1)凝集aSynを特異的・超高感度に検出できる新原理・技術のバイオセンサ技術の開発では、 [1]「自己鋳型効果」の増大化・活性化、[2]患者脳髄液中フィブリルを検出、を進め、[1]では塩によるアミロイド線維凝集効果からNaCl添加濃度依存性での最適同濃度が存在し、通常使用PBS溶媒のみに比べ1桁前後の感度増大を得た。一方、非PD患者血清でも感度があり、特異性増大の必要性が判明した。[2]では塩は用いずPD患者と非PD患者(別疾患患者)の血清を測定の結果、PD患者で2倍以上の出力信号を得たが、非PD患者でも出力があり、これも特異性増大の必要性が判明した。[3]機能性分子脂質膜修飾では、aSynとリポソームとの相互作用を増強するべく、IgG抗体のリポソーム膜への提示条件を検討し、IgG上のアミノ酸残基としてリジンやアスパラギン酸等4通りの提示条件中、リジンを介したマレイミド形成がIgGの提示状態が有望であった。 さらに研究目的とする、2)患者検体中aSyn等を一括計測するためのマイクロ流路集積型同アレイセンサを試作、評価、4)同アレイでデータライブラリ構築を行い、ターゲット識別能や相互作用検出の高精度化を目指した機械学習の適用に対して、[4]マイクロ流路構造、応力集中で感度向上したカンチレバーセンサのパターン設計を行った。4×4アレイ配置、多チャンネル同時計測のためチップ上ブリッジ回路構成とした。さらに次年度計画項目の重要研究分野の[5]信号情報処理システムも検討を進め、データ収集系、統計的学習スペクトル分析アルゴリズムを検討し、光学系は同研究者既開発3x3蛍光分析システム改造を見通し、統計的学習ではDA,SVM,k-NN,PLSR,MLR等の候補を網羅的に検証可能なソフトウェア環境を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅰ.センサ検出能力の生化学的側面として、1.①「自己鋳型効果」の増大化・活性化、②患者脳髄液中フィブリルを検出、を進めた。①では塩によるアミロイド線維凝集効果からNaCl添加濃度依存性での最適同濃度が存在し、通常使用PBS溶媒のみに比べて1桁前後の感度増大を得た。一方、非PD患者血清でも感度があり、特異性増大の必要性が判明した。②では塩は用いずPD患者と非PD患者(別疾患患者)の血清を測定の結果、PD患者で2倍以上の出力信号を得たが、非PD患者でも出力があり、やはり特異性増大の必要性が判明した。これらを検証する生体サンプル中超微量aSyn凝集体を測定する既存技術系として、ELISAとRT-QUICの系を確立した。患者試料取得を行うため倫理委員会許諾後、蓄積を進めている。2.②機能性分子脂質膜修飾では、aSynとリポソームとの相互作用を増強するべく、IgG抗体のリポソーム膜への提示条件を検討した。提示の際にIgG上のアミノ酸残基としてリジンやアスパラギン酸などに着目し4通りの提示条件中、リジンを介したマレイミド形成がIgGの提示状態が有望であった。 Ⅱ.集積アレイセンサ化にて、1.① マイクロ流路での流体動作、②同パターン設計、作製を注意して行った結果、応力集中で感度向上したカンチレバーを流路セルに合わせて4×4のアレイ状に16本配置し、多チャンネル同時計測を想定した2ゲージ結線のブリッジ回路構成を行うため、カンチレバー当り歪ゲージ抵抗2個を配置することとした。さらに次年度重要研究分野の信号情報処理システムでは、センサ単体を想定したデータ収集系、統計的学習スペクトル分析アルゴリズムを新たに検討した。光学系は同研究者既開発3x3蛍光分析システム改造で実現を見通せた。統計的学習ではDA,SVM,k-NN,PLSR,MLR等の候補を網羅的に検証可能なソフトウェア環境を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.カンチレバーセンサ検出能力の生化学的側面としては、最適な塩濃度を使用しつつ特異的検出能力増大のために、開発中の抗体分子を固定化したリポソームを用いていく。但し塩、抗体分子無しでも非PD患者血清中感度より2倍以上の有意なaSyn感度をPD患者で得たのでその能力での利用可能性も検討したい。比較実証既存技術となる高感度ELISAとRT-QUICの系は精製凝集aSynに対して有効であったが、生体サンプル中には抗原抗体反応・RT-QUIC反応を阻害する様々な物質が存在するため、RT-QUICの系においては抗凝集aSyn抗体を用いた精製過程を挿入し、感度・特異度の向上を目指す。また今後の臨床応用のため生体サンプルの蓄積を進めていく。リポソーム固定抗体分子では、IgGの提示効率をは改善するべく、結合脂質のアシル鎖長、二重結合の有無、頭部構造の影響を検討する。今年度後期までには一定の提示率でまずはIgG提示リポソームを調製し、グループ全体の研究を加速したい。 Ⅱ.集積アレイセンサ化では、カンチレバーアレイの歩留まりや感度のばらつきの検証を行うとともに、ブリッジ回路を同一基板上に構成する。またマイクロ流路構造との一体化の試験を行い、各流路セルへカンチレバーセンサの適切な配置が行えるか、測定溶液を注入しての計測が行えるか検証する。同時に、カンチレバーセンサのMEMSプロセスの特性向上、安定化のため、現在並行して進めている応力集中や歪ゲージ材料の改良による高感度化カンチレバーの適用を行っていく。そしてアレイセンサ信号情報処理システムについては、既存の3x3蛍光分析システムを改造して実データを収集し、統計的学習を試行することで、まずLSPRセンサへの適用可能性の検討に着手する。
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