本研究は、「白人至上主義」という語が合衆国建国当初から19世紀末までの長きにわたり使われなかった史実を明らかにすることによって、現在その語の乱用がアメリカの民主主義を脅かしていることに一石を投じる試みである。「白人至上主義」という語は、Black Lives Matterの高まりを背景に米国史を一貫する思想であるかのように誤って理解され、アメリカ社会を異人種間で分断するのみならず、白人全てが「至上」であるかのような言説が白人社会内の不平等を不可視化している。19世紀末に民主党白人エリートが自らの立場を維持する目的で使った政治スローガンを21世紀に無批判に使うのは民主主義に資するものではない。
|