本研究は、「地域開発」とそれに伴う「環境破壊」や「公害」などを対象に、その歴史的展開を分析・記録すること、今日の社会変化に応える歴史教育の授業として教材化できるようにすること、を目的にして実施しました。その成果として、水俣病や各地の大気汚染などに関する地域資料の収集分析、研究会での報告や、図書・論文としての成果の公開、勤務校や大学の教員養成の授業での教材化を行いました。 具体的には、水俣病被害者によるアジア各地との交流の足跡、瀬戸内海や、尼崎、川崎の大気汚染公害の相互連関の様子、横浜方式と地方の核関連施設開発の様子、水俣病被害とコロナ禍の類似性などを調査しました。歴史学においては、戦後日本社会史研究の発展に貢献しています。また、戦間期横浜での都市衛生についてふれた論文を、神奈川から考える世界史の一環として、まとめました。 社会科教育学や歴史教育の分野では、「環境責任」という概念を軸とした授業実践事例を研究論文として、コロナ禍での感染症の歴史の授業を実践記録として、それぞれ公開しました。また、調査で知りえた内容は、勤務校での教育活動や、大学での教科教育法などに応用しています。環境教育の分野で各地の公害学習入門の作成、歴史教育の分野で東アジア共通歴史教材の開発、地域社会の変化と世界史を結ぶ教材の開発、歴史総合向け資料集作成を行いました。 今後は、今回できなかった現地調査やインタヴュー調査の実施を行い、比較研究をより進めていきたいと考えています。
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