2022年に実施される高等学校学習指導要領では、現行の「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」となる。また、探究的な教科や科目が新設され、各教科においても課題探究型の教育方法が導入されるとともに、より探究的・教科横断的なカリキュラム・マネジメントが求められることとなる。 このような国全体の動きの中で、探究活動への関心や効果への期待が高まっているが、探究学習を導入・実施するにあたって、その指導方法が学習者の探究活動の成果にどのように結びついているかについてはこれまで科学的に明らかにされていない。 本研究では、「総合的な学習の時間」において全校生徒が卒業研究として個人で課題研究を行っている兵庫県の中高一貫校の高校課程の生徒を対象に行った多肢選択と自由記述のアンケート結果を分析し、自ら設定した課題について研究を進め、論文を作成して発表する活動(以下、探究学習)は総じて学習者に肯定的に捉えられているか、学習者は探究学習でどのような能力が身に付いていると感じているか、また実際に身に付いているかについて検討した。 分析の結果、探究学習は、知識の獲得だけでなく、ものごとに主体的に取り組む力や目標を達成するために必要なプロセスを計画し、準備する力(計画性)の涵養にも役立っていることがわかった。また、研究を進めるうえで、情報収集能力や講義や文献の理解力、データを解釈する能力、それらを支える論理的思考力、批判的思考力の育成に寄与し、さらに研究成果をまとめ、成果を発信するプロセスで論文執筆能力が身に付いたと感じている生徒の割合が高く、探究学習は総じて学習者に肯定的に評価されていることが明らかとなった。
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