研究実績の概要 |
1.研究の概要 本研究では,数学教育における教材開発の幅を拡げることを目的とし,従来から教科書等で扱われる文章題より真正な問題としてのロールプレイ教材の可能性を検証した。とりわけ,社会的価値判断やアイデア創出などの広義のクリティカルシンキングに注目しており,それら発揮する機会をつくることで,将来「破壊的イノベーション」を起こすための資質向上に寄与できるのではないかと考えた。高等学校数学A「確率」におけるロールプレイ教材「企業キャンペーンの提案」を開発し,アンケート分析を行った。学習動機の2要因モデル(市川)を用いて,動機づけの観点から授業分析を行った。 2.開発教材について 「1杯200円で販売しているジュースに対し,キャンペーン(サイコロ2つの目の出方によって値段やジュースの量を変える)を実施する」「スマートフォン決済アプリにおいて,キャンペーン(40人に1人に80%の金額を還元する)を実施する」という2つの文脈で期待値をもとにして企業側から見た利点を考える課題を設定した。その後,グループで取り組む課題として,「自らのロールを定めた上での,企業キャンペーンの提案」を設定した。 3.開発教材の分析 アンケートの結果から,通常授業と提案授業では,生徒が授業を受ける際の動機の自己認識が異なることが読み取れた。具体的には,訓練志向・実用志向・関係志向において肯定的な回答が増加した。関係志向における肯定的回答の増加は授業形態(グループワーク)に起因するものと考えられる。一方で,訓練志向・実用志向は学習内容の重要性・学習の功利性が大きいものとして分類されており,これらの志向における肯定的回答の増加は,生徒の「学習していることを大事で役に立つものだと感じる」という動機を引き出した結果であると考えることができる。
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