○目的 本研究では、複雑で曖昧な保育実践を「写真」という媒体で切り取る行為とその後の対話によるリフレクションによって、評価の観点を教師がもてるようになるということが、子どもの多様な学びや育ち・遊びをみとる能力とつながるのであり、これがさらに子どもの豊かな学びや育ちを促し、保育の質向上へとつながっていくのではないかという仮説を立て、保育実践における「写真」という媒体の有効な活用方法及び記録性について研究する。 ○方法 ・写真のもつ特性に注目し、保育に活用される写真について記号論的に考察する。 ・保育実践における写真行為の一つである「撮影する」行為に注目し、保育実践において保育実践者が写真を「撮影する」という行為がどのような意味をもつのか考察する。 ・保育実践をiPadで記録し、複雑で曖昧な保育実践を切り取るフレームを評価の観点として教師がもてるようになる「写真」の活用方法について園内研修等で検討する。 ○成果 写真は「現実を再構成して、提示する表現」であり、その表現は単純に現実そのものではないこと、観者の経験や内的思考により見え方が変化すること、が明らかになった。また保育実践者が「撮影する」行為は、①連続する保育実践を「構造化し分節化する」、②保育実践から距離を取り、「不介入な行為」としての身体性をもつ、③日本の保育文化における身体の居方に影響を及ぼす可能性がある、④写真の時間的構造から、写真を提示する妥当性や信頼性を検討する必要がある、⑤保育実践を「写真的視覚」によりインデックス的に切り取る可能性がある、⑥保育実践者が物語りを再構成する「内省」を促す専門性を高める一方で、撮影時には意味をもたない保険的な記録も促す可能性がある、⑦保育実践における即興的判断と重なり「リフレクション・イン・アクション」に通じる、ことが明らかになった。
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