〇研究目的:本研究は、生徒が自由に学習の目的・内容・方法を考えて進める題材を設定し、意図的にインフォーマル・ラーニングの場を授業時間に設定して学びの実態を解明し、「学びに向かう力」を獲得する可能性を検討することが目的である。 〇研究方法:本研究では、主体的に鑑賞活動に取り組む試みとして、題材「ミュージック・トーク」を開発し、実践したものである。本題材は、“みんなで”聴きたい音楽を生徒一人一人が用意し、少人数グループで一緒に聴き、その音楽の魅力について語り合う活動である。紹介者はみんなで聴きたい音楽を自由に決定し、その音楽の魅力を分析してプレゼンテーションする。聴き手はその説明を聞き、音楽を聴いての感想や気づきを紹介者とともに自由に話し合う。授業者が目標や方法、内容を提示する授業形態ではなく、授業者は生徒が自らの力で学べる場と時間を支援する立場となり、生徒にとってインフォーマル・ラーニングの場となることを意図したものである。プレゼンは各自のChromebookを使い、ロイロノート・スクールを活用した。 〇研究成果:選曲は重なる楽曲がほとんどなく、ジャンルのカテゴライズが困難な傾向がみられた。「みんなで一緒に聴きたい」という選曲の観点は、「自分の好きな」という観点とは異なる。聴き手からの反応を意識した選曲となり、他者へ伝える配慮が働いた。魅力を語る際には、音楽の背景、演奏者、歌詞、音楽を形づくる8要素(速度・リズム・旋律・音色・テクスチュア・強弱・構成・形式)に沿った説明を試みるようになった。自ら選曲し、楽曲・演奏の分析を設定したことにより、インフォーマル・ラーニングが醸成され、分析が細かく丁寧で、主体的かつ個性的な活動となり、プレゼンの方法、話し合いにも工夫がみられ、「ミュージック・トーク」は「学びに向かう力」を引き出せることが明らかになった。
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