本研究の目的は、知財教育をテーマにした高等学校における教科横断型の授業デザインを提案し、その実践を通して生徒の学びを検証するものである。一部、新型コロナウイルスによる学校閉鎖などにより予定変更せざる得ない部分があったものの、構想は、情報科を主軸として理科や仏教科などを対象に、生徒に知的財産における正しい知識や見方、考え方を持たせることができるような題材や活動内容を設定して実践した。 情報科では、知的財産に関する基礎知識を学ぶとともに、対象教科での活動との接点を見つけ出して、先行技術として知的財産を取得している事例を紹介した。その上で、理科ではエネルギー問題に取り組み、熱機関の学習において自らが理想とするエネルギーの利活用を考案させた。仏教科では聖徳太子による十七条憲法を題材にテキストマイニングの手法を使うとともに、著作権の視点を加えてその込められた意図について分析した。 成果として、いずれの構想においても情報科を主軸とした教科横断型の授業デザインを無事に実践することができた。授業後に生徒へ実施した質問紙調査では、知的財産への知識や見方、考え方が期待通り変容したことが確認された。生徒の自由記述でも各授業に向けた積極性や学びに向かう態度が肯定的に変化したことがわかる記述が見受けられた。この実践において、高等学校の知財教育における教科横断型授業の成果を示せたことは、前年の成果である中学校の知財教育の事例もあわせて、中等教育機関での知財教育の系統性を持たせる授業デザインづくりに対して一助となることが期待できる。
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