学習指導要領では,子ども達に知識・技能を身につけさせると同時に,思考力・判断力・表現力を育む必要があると謳っている。思考力・判断力・表現力を育むためには,協同学習が有効であるのではないかと考えた。そこで,アメリカ合衆国の協同学習の研究者であるスペンサー・ケーガンの提唱する協同学習とその手法(以下ストラクチャー)を取り入れた授業を実践し,その効果を解明しようとした。 そのために,まず文献調査によりスペンサー・ケーガン理論の理解をした。また,彼の提唱する協同学習のストラクチャーの調査を行った。その上で,神戸大学附属小学校2年生を対象に,算数科の単元「箱のかたち」において「ラウンド=ロビン」のストラクチャーを用いた授業を実践し,その効果の検証を行った。その際,効果の違いを明らかにするために,当該学年に2つある学級のうち,1組は「ラウンド=ロビン」のストラクチャーを用いない授業,2組は「雪玉ころがし」のストラクチャーを用いた授業を実践した。そして,4人グループ内での発言者数,発言内容の種類について記録を取り,両者の比較をした。 その結果,「ラウンド=ロビン」のストラクチャーを用いた授業の方が発言数,発言内容の種類共に数が多くなるなることが明らかになった。これは,「ラウンド=ロビン」のストラクチャーにより「グループに所属している構成員が順番に発言する」ルールがあるために,「解っていても発言しない」児童が発言するようになった結果と考えられる。このように,より多くの児童に発言をさせたい場面や,発言の多様性を必要とする場面では,スペンサー・ケーガン提唱するストラクチャーは効果的に働くことが明らかになった。
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