一人一台端末環境での学びを確かなものにするために、学習履歴の活用が課題となっている。学習履歴は教師が生徒を指導、評価するために利用されるだけでなく、むしろ子どもたち自身が自らの学びを自覚的にふり返り、再構成するプロセスにおいてこそ活用するべきであると考える。また、紙媒体と異なりデジタルデータでは動画や音声などのマルチメディアでの記録も容易である。そこで本研究で着目したのが、学習者によるカメラの活用とデジタルポートフォリオの編集である。 本研究は、探究的な学習におけるデジタルポートフォリオの活用の有効性を探っていった。課題解決のプロセスを学習者自身が俯瞰してとらえるメタ認知を高める支援や、学習成果の共有を促す学習履歴のありかたについて明らかにしていくこととした。また、デジタル化の利点を活かし、動画などのマルチメディア活用にも積極的に取り入れることとした。 実践例の一つに「話すこと・聞くこと」の学習があげられる。プレゼンテーションの際に、班に一台撮影用のiPadを配付し、グループ内で撮影し合うようにした。また撮影した映像データを共有することで、生徒たちはグループのメンバーでなくても誰の発表も見ることができるようにした。また、教師は他のクラスの優れた発表などを映像で紹介し、参考にさせた。 これらの実践研究の成果として「映像によるメタ認知を高める支援」と「学習成果の共有」の2つが挙げられる。本実践では、生徒自身が撮影するカメラを活用して、課題解決のプロセスを学習者自身が俯瞰して捉えるメタ認知を高める支援を行ったが、「どのように撮影するか」という撮る前の準備や、撮った映像を何度も見返すことにより、学習者自身が学習プロセス全体を俯瞰して捉える視点を促すことができた。また、撮影した動画をお互いに見合うことなどから、学習内容の共有を促すことができた。
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