研究実績の概要 |
大分県九重町に分布する更新統野上層からは珪藻,植物,昆虫および淡水魚類の化石が産出している.魚類はサケ科のビワマス類似の一種(Oncorhynchus masou subsp.),コイ科のNipponocypris takayamai Miyata, Yabumoto and Hirano, 2018,ニゴイ属とタナゴ属,ハゼ科ヨシノボリ属のクロヨシノボリ(Rhinogobius brunneus)とゴクラクハゼ(R. similis)の産出が確認されおり,更新世の淡水魚類を理解する上で重要な化石群と考えられている.また,「大分県の化石」としても指定されており,地域の教育資源としても重要な化石群である.本研究ではニゴイ属化石について現生種との比較検討を行った 化石が産出する野上層は珪藻土主体の湖成層で,年代は上位の万年山溶岩が約0.7Ma,下位の鹿伏岳溶岩の年代が約0.3MaのK-Ar年代を示すこと,野上層上部に樋脇テフラが挟在することから中期更新世(チバニアン)と考えられている. 魚類化石は珪藻土中のリン酸塩ノジュールに含まれていることが多い. 本研究の結果,玖珠盆地産ニゴイ属の化石は歯骨および下鰓蓋骨でコウライニゴイに類似する。また、主鰓蓋骨ではニゴイとコウライニゴイのどちらとも異なる.ことが明らかとなった.尾部骨格については第3尾鰭の神経棘が2本のものが1個体認められた.椎骨数は玖珠盆地産ニゴイ属魚類42-44である,現生ニゴイ属魚類の範囲内にはあるが,少ない方で原始的な形質の可能性がある.以上のことから玖珠盆地産ニゴイ属の化石は絶滅種の可能性があり、海外産のニゴイ属魚類との比較も行うなど分類学的研究を進めていきたい.
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