本研究は,季節風による飛砂の自然な動きを活かし,砂の流出を防ぎ,砂の堆積を増加させる効果的な方法を検討し,砂浜の保全対策を行うことを目的とした. 遠州灘に面する表浜海岸において,2020年9月から12月までの4回,UAV(Phantom4 PRO)による砂浜の計測を行い,取得した空撮写真を用いてSFM処理を行い3次元モデルを構築した.このデータを用い,9月と12月の土砂量の比較を行った結果,植生帯を除く砂浜面(約9.000平米)に約1437立米の砂が堆積したことを確認した.これは,9月から10月にかけて日本の南側を複数の台風が通過し,高波浪により,砂が押し上げられ堆積したものと考えられる. さらに冬季の飛砂が砂浜地形と海浜植生に与える影響について,ウェザーステーション(Davis社製 三杯式風向風速計)を用い,1分ごとの風向と風速を計測した.これに加え,セディメントトラップを設置して30分間,飛砂の捕捉を行った.その結果,平均風向はWからWNWであった.海浜植生が繁茂している標高4~5m付近においては,約4m/sと風が弱く,飛砂も少ない.これは海浜植生が多く繁茂している場所では砂の動きは鈍くなり,砂が停滞しているためである.陸側から海側へ,西側から東側へ行くほど,風速は強くなり,飛砂量も多くなる.これは西側にある駐車場や緩傾斜護岸などの地形が関係しているものと思われる. 以上のことから,台風の直接的影響を受けない場合,砂浜は堆積傾向にあることが確認できた.また,冬季の海岸では西からの強い季節風により,多くの飛砂が発生しているが,土砂の流入と流出のバランスがうまく保たれているためか、植生帯にも沿岸方向の砂浜段面にも大きな地形変化は見られなかった.したがって調査範囲において砂浜は堆積傾向にあるものの,飛砂による地形変化はおこっていない.今後も表浜海岸においてモニタリングを継続する予定である.
|