日本産ゴキブリ類はこれまでに約60種が記載・報告されている。このうち約10種が病原微生物を媒介する衛生害虫種として知られておる一方で,多くの種は森林生態系において腐敗植物の分解者として,物質循環に重要な役割を果たしている。福岡県からはこれまでに11種が報告されている(朝比奈,1991)が,詳細な調査・報告はなされていない。 申請者は,福岡県の森林性ゴキブリ相を明らかにするため,採集調査を行った。本調査の結果,サツマゴキブリ,キスジゴキブリの2種が本県に分布していることが明らかとなった。また,標本を得ることが出来なかったが目視情報として,衛生害虫種であるワモンゴキブリも確認することが出来た。これらの結果,本県で分布が確認されているゴキブリ類の種数は3種増加し,14種となった。 これらの結果から,森林生態系を構成する種構成がまだまだ未解明であることが示唆された。また,大型の衛生害虫種であるワモンゴキブリの福岡県への侵入が確認されたことから今後県内に分布拡大する可能性もあり,モニタリングしていく必要があると考えられた。
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