研究課題
バンコマイシン (VCM)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)感染症に対する第一選択薬として広く用いられている。重篤な有害事象である腎障害は、血中濃度に依存して 高率に発症するため、薬物治療モニタリング(TDM)による予防が標準的に行われているが、TDMによって適切な血中濃度管理を行っても腎障害は20%程度と依然高頻度に発症する。腎障害は、VCMの継続を妨げるとともに、予後悪化や医療費高騰の要因にもなっており、TDMに依らないVCM関連腎障害(VIN)の発症機序に基づくVINの新規予防策確立は喫緊の課題である。研究代表者は、LINCS (ヒト由来細胞株において薬剤添加によるゲノムワイドな遺伝子の発現変動を格納した大規模データベース)によるインシリコ解析と FAERS (FDA に集積された約 1000万件の副作用データベース)によるリアルワールドデータ(RWD) 解析から VINを抑制する既存承認薬剤を探索した結果、VINの予防候補薬となり得る既存承認薬を見出し、VINモデルマウスにおける腎障害抑制効果を既に確認している。本研究では、予防候補薬の腎障害抑制効果に対する作用機序について検討した。その結果、in vitroにおいて予防候補薬の併用によりヒト腎近位尿細管由来細胞(HK-2cell)のVCMによる細胞生存率の減少は有意に抑制された。また、in vivoにおいても腎臓でのアポトーシス関連タンパク質の有意な発現減少が認められた。これらのことから、予防候補薬は尿細管細胞死による腎障害を抑制し、この腎障害抑制にアポトーシスが関連していることが示唆された。
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Acta Med Okayama
巻: 74 ページ: 365-370
10.18926/AMO/60376
月刊薬事7月増刊号
巻: 62 ページ: 2048-2055