発熱性好中球減少症(FN)出現時には水溶性薬物の分布容積が増大することと腎排泄型薬剤のクリアランス(CL)が上昇することが知られている。そのため、両特徴を有するVCMのFN時における血中濃度は、非FN時と比較し顕著に低値を示す。成人だけでなく小児でも同様に、FN出現時にVCMのCLが上昇したとの報告があるが、この報告は15歳以下の小児を一律で評価した結果である。一方で、小児では年齢ごとに体重あたりの腎機能や薬物のCL能力が異なるため、年齢を細分化することでより精度の高い情報が得られると考えられる。このような背景の下、本研究ではFNの有無が小児におけるVCMの薬物動態にどのような影響を及ぼすかを年代別に比較検討した。薬物動態パラメータの算出には、Yasuharaらによる日本人小児患者を対象に構築された母集団薬物動態モデルを利用した。実測トラフ値を用いてベイジアン推定を行った後に患者個別の薬物動態パラメータを算出した。FN群と非FN群における体重当たりの1日投与量、初回トラフ値、C/D比、CLにはそれぞれに有意差が認められ、小児も成人と同様にFN出現時にはVCMのCLが上昇することが示された。年代別の結果としては、1-6歳の幼児期群が小児の中で最もFNの影響を受けやすく、多変量解析の結果からもFNの有無がその群の患児におけるC/DとCLの両方に影響を与える有意な因子として抽出された。以上の結果より、小児においてもFN患者ではVCMのCLが亢進することで血中濃度は低値を示し、その影響は特に幼児期において顕著である可能性が示唆された。現在、得られた血中濃度をもとに、NONMEMを用いてFNの有無を加味した母集団薬物動態モデルの構築を試みている。Final modelを構築しバリデーションを実施後、モンテカルロシミュレーションによりFN患者にVCMを使用する際のノモグラムを作成する予定である。
|