【研究目的】タクロリムス血中濃度は個人差が大きく血中濃度モニタリングを行い、厳格に投与量を管理する必要がある。CYP3A5、IL-6遺伝子多型およびIL-6発現量とタクロリムスの血中濃度について網羅的に検討した報告はない。加えて、タクロリムス血中濃度が至適濃度で管理されている患者において拒絶反応を抑制できない症例も存在している。今回、腎移植領域においてCYP3A5遺伝子多型およびIL-6遺伝子多型がタクロリムスの体内動態に及ぼす影響について、さらにIL-6発現量が拒絶反応やタクロリムス血中濃度に及ぼす影響を検討した。 【研究方法】倫理委員会の承認を得、同意を得たタクロリムス服用腎移植患者142名を対象にした。CYP3A5、IL6-634C>GおよびIL6 receptor(rs8192284A>C)の各多型におけるIL-6発現量を比較した。移植28日目のIL-6発現量とタクロリムス血中濃度を用いた。拒絶反応発現について腎生検の結果を後方視的に調査した。 【結果】CYP3A5多型による層別化とIL-6発現量に差はみられなかった。IL-6発現量はIL6 receptorのAアレル保有群(n=124)、C/C多型群(n=18)でそれぞれ13.5と17.3 pg/mL(P=0.019)と有意差が観察された。IL6-634C>G多型において有意差はみられなかった。一方、IL-6発現量とTリンパ球関連型拒絶反応(TCMR)との関連はみられなかった。TCMRはタクロリムスのAUC/Dが独立変数となり、拒絶あり群:33.2 vs 拒絶なし群:39.8 ng・hr/mL/mg (P=0.019)であった。以上より、IL-6発現量とIL6 receptorの関連が明らかとなった。一方でIL-6は拒絶反応には影響を及ぼさずタクロリムス血中濃度管理が腎移植後の長期予後には重要であると考えられる。
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