研究課題
抗悪性腫瘍薬であるMethotrexate(MTX)は、静脈内投与に加え、髄腔内投与も行われる。髄腔内投与は、髄液中の薬物濃度を高く維持するとともに全身性の副作用が最小化される利点を有する。一方で、高濃度暴露の持続は危険でもあり、副作用マネジメントから、血液中に加え髄液中 MTX 濃度の測定も望まれる。血液中 MTX 濃度の測定には全自動測定装置による免疫学的測定法が広く普及している。一方、髄液中 MTX 濃度の測定には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などが使用されるが、簡便性や迅速性に欠け、結果を即時的に診療へ反映しづらい点が問題となる。そこで本研究では、日常的な脳脊髄液中 MTX 濃度測定の実現を目的に、化学発光免疫測定法による髄液中 MTX 濃度測定環境の構築を試みた。そのためにHPLC-UVによる髄液中MTX定量環境の構築、及び化学発光免疫測定法との測定法差異について検証を行った。HPLC-UV法による検証の結果、検量線は、0.10 μM-1.50 μMの間で良好な直線性を示した(相関係数 r=0.999)。さらに定量下限濃度、選択性、試料の安定性、精度及び安定性に関して、本法は FDAの Validation Guidance の基準を満たした。さらにHPLC-UV法と化学発光免疫測定法と比較検証の結果、Passing-Bablok 回帰により算出された 2 法の測定値に対する回帰直線式は、HPLC-UV 法 =1.205×化学発光免疫測定法 - 0.024 であった。また相関係数は r = 0.995 であり良好な相関性を示した。Bland-Altman プロットから、2 法の測定結果には比例誤差が認められた。以上、本研究で得られた補正式を使用することで、広く普及している化学発光免疫測定法を用いて、脳脊髄液中 MTX 濃度を評価可能であると考えられる。
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