研究実績の概要 |
抗癌剤による皮膚障害は患者のQOLを低下させ大きな精神的苦痛をもたらす。薬剤の用量規制因子となり化学療法の投与可否の決定因子となる。現在、皮膚障害を完全に防ぐ方法は確立されていない。スキンケアが重要とされているが、水分量や皮脂量について示した報告はない。皮膚の水分量や皮脂量を測定し、皮膚障害の発現との相関関係が解明されれば、患者が皮膚測定器を用いてセルフモニタリングを行うことで、適切なスキンケアの実施が可能となる。皮膚障害がコントロール可能となれば治療成績の向上に寄与することができると考える。 まず、浜松医科大学医学部附属病院の臨床研究データベースを用いて皮膚障害の実態を調査した。2007年4月~2020年3月にセツキシマブ(以下,Cet)を処方された患者を対象とした。対象期間中にCetを処方された患者161名であった。除外基準としてCet初回投与時にinfusion reactionを発現し投与中止となった患者を除外し、調査対象患者は155名とした。Cet投与中に皮膚障害を発現し対症外用剤を処方された患者は145名(87.7%)であった。Cet投与前に外用剤の予防処方がされた患者において、Cet投与中に皮膚障害が発現し外用剤が処方された割合は82.8%であり、投与前に予防投与がされなかった患者の96.7%と比較して低い傾向にあり予防投与の重要性が示唆された。また、Cet投与中に皮膚障害を発現し外用剤が処方された患者の総投与回数は平均27回であるのに対し、皮膚障害を発現せず外用剤を処方されなかった患者の総投与回数は平均5回であることから皮膚障害の発現がCetの有効性の指標となりうることが示唆された。いかに皮膚障害をコントロールしCetを継続するかが治療効果へ寄与する要因として重要と考えられた。さらに、他の薬剤についても解析をすすめ、実際の皮膚測定器を用いた研究を進めていく。
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