研究目的:イリノテカを含む化学療法の副作用である下痢の発現には、活性代謝物(SN-38)の代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)1A1の遺伝子多型(UGT1A1*6、*28)が関係している。すなわち、これらのホモまたは複合ヘテロ接合体の患者では、酵素活性の低下によりSN-38の代謝が遅延し、副作用のリスクが高まる。漢方薬の半夏瀉心湯(HS)は、イリノテカンによる下痢に対する有効性について報告されているが、その有効性とUGT1A1遺伝子との関係は明らかにされていない。本研究では、イリノテカンによる下痢予防を目的に併用するHSの使用実態を、UGT1A1の遺伝子多型と併せて調査することで、イリノテカンによる下痢に対するHSの有効性とUGT1A1遺伝子との関係について明らかにする。
研究方法:イリノテカン治療中に下痢予防薬を投与した24名(男/女:10/14)67 cycleの小児がん患者の下痢の発症を調査し、HS群とそれ以外で比較した。
研究成果:UGT1A1遺伝子多型よりExtensive/Intermediate metabolizer(EM/IM)が19名、Poor metabolizer(PM)が5名であった。 EM/IMではHS群の25 cycle中19 cycle(76%)、それ以外の29 cycle中13 cycle(45%)で下痢はなかった。PMではHS群の2 cycle中1 cycle(50%)、それ以外の11 cycle中9 cycle(82%)で下痢はかった。HSは、EM/IM(UGT1A1活性が高い患者)において、イリノテカンで誘発される下痢に対する予防効果が高いと考えられた。
|