本研究は、有害事象自発報告データベースと臨床データを組み合わせた解析を行い、予測精度の高い免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による致死的な免疫関連有害事象(irAE)の発現予測因子を同定することを目的とする。本研究はirAEのなかでも特に頻度が高い致死的なirAEである、ICI関連間質性肺疾患(ICI-ILD)に焦点をあて、有害事象自発報告データベースの解析に先立ち、実臨床でのデータを用いてICI-ILDの危険因子の同定を試みた。2016年4月から2019年12月までに徳島大学病院においてICIを初めて投与し、ICI治療が終了した肺がん患者102名を対象とした。ICI-ILDはICIの投与中又は投与後に急性発症し、血清学的検査や画像検査に基づき診断された抗菌薬不応の肺疾患と定義した。ICI-ILDのgrade(G)評価はCTCAE v5.0を用いた。ICI-ILD発症患者は19名であり、G3以上のICI-ILD発症患者は10名であった。グレード3以上のICI-ILD発現患者群のICI投与後30日死亡率は30%であり、他の患者群より有意に高く、治療成功期間も有意に短かった多変量解析の結果、ICI-ILD発現リスク因子として、Performance Status(PS)≧2、Brinkman指数(BI)≧1000が同定され、G 3以上のICI-ILD発現リスク因子としてPS≧2が同定された。本因子は、ICI-ILD発現に関連する因子として、はじめて同定された因子である。 今後の展望として、有害事象自発報告データベースを用いて、ICI-ILDの有害事象報告が多い患者における特徴的な因子を、データマイニング手法を用いて解析する。しかし、臨床データで得られたPSやブリンクマン指数といった因子は有害事象自発報告データベースには含まれていないデータである。そこで、有害事象自発報告データベースを用いた解析では、新たなICI-ILDのリスク因子の同定を試みる。そして、両解析で得られた結果を融合させることで、よりICI-ILD予測精度の高いリスク因子の同定と、予測アルゴリズムの構築を目指す。
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