研究課題
【 目的 】抗がん剤による薬剤性腎障害は、抗がん剤の減量や中止に繋がる場合も多く有効ながん治療の遂行を妨げ、臨床上大きな問題となっている。がん薬物療法時の腎障害診療ガイドラインの中でも、腎障害の予防に推奨される薬剤はなく、水分負荷などが推奨されているが、患者への負担も大きく、その効果は不確実でエビデンスも不十分であり、がん化学療法誘発腎障害の新しい予防法の確立が求められている。一方, 腎虚血再灌流モデルにおいてHeat shock protein (HSP)の活性化により腎障害が軽減することが報告されている。本研究の目的は、シスプラチン投与患者に対する腎障害予防薬の開発につながる基礎的知見を集積することである。【 方法 】遺伝子発現データベースであるGEOおよびLINCSを用いたインシリコ解析により、HSPを活性化する既存承認薬を抽出した。さらに、シスプラチン誘発腎障害モデルマウスを作製し、インシリコ解析によって抽出した予防薬候補の腎障害予防効果を血清生化学検査値(BUN、血清クレアチニン値)などをもとに評価した。【 成果 】インシリコ解析から、シスプラチン誘発腎障害を抑制しうる既存承認薬が2種類抽出された。シスプラチン誘発腎障害モデルマウスを用いた解析から、抽出された2種類の予防薬候補のうち、1種類の既存承認薬において、有意に腎障害を抑制することが明らかになった。
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