我々は、IgG4関連疾患患者の一部でIgE測定値が偽低値となっている症例に遭遇したことに端を発し、IgG4-IgE複合体の存在を発見し、IgG4-IgE複合体を検出する測定系を確立してきた。現在までに、IgG4-IgE複合体が普遍的に存在するのか、一部の疾患に限定されているのかということは明らかにされていない。そこで本研究では、IgG4-IgE複合体の出現頻度を調査し、臨床的背景との関連を明らかにすることを目的に研究を行った。 ゲルろ過HPLCにおいて分子特性を確認したところ、IgG4とIgEは複合体を形成していることが確認されたが、結合部位や立体構造は明らかになっていなかった。またIgG4-IgE複合体はIgG4関連疾患患者の21.2%に認められ、他の疾患では認められなかった。さらにIgG4-IgE複合体保有患者は、自己免疫性膵炎患者が高頻度であるということが明らかとなった。一方、IgG4-IgE複合体の保有群と非保有群において臨床所見を比較検討したが、統計学的な有意差は認められず、IgG4-IgE複合体の臨床的意義は明らかになっていない。IgG4-IgE複合体の存在はIgG4、IgEの各濃度に依存しないことから、IgG4またはIgEの量的な異常ではなく、質的な異常に起因する可能性がある。IgG4関連疾患におけるIgG4産生の意義は未だ解明されておらず、本研究において明らかになったIgG4-IgE複合体の存在は病態の解明の手がかりとなる可能性がある。
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